インドに伝わる昔話の絵本です。絵はダイナミックで色彩豊か。親しみやすい作品に仕上がりました。
お話は仙人がタカに襲われたねずみを救うところから始まります。仙人はねずみを人間の娘の姿に変えて一緒に暮らし始めます。美しく育ち、年ごろになった娘のため、仙人はこの世で一番立派な結婚相手を探しだそうと出かけます。
最初に訪ねた相手は太陽です。「あなたは すべてを てらしだす。このよで いちばん えらい おかただ」と仙人はいいますが、太陽は「そうともいえない」といって断ってしまいます。雲が出れば太陽の光は届かなくなるというのです。次に訪ねた雲も、風には吹き飛ばされてしまうといって断ります。
ここまで読み進めると、たぶん多くの方が「あれっ」と思うはずです。インドの昔話だったはずですが、その内容は日本の昔話にそっくりです。この絵本のお話は「バチャタントラ」という世界最古の物語集の中の一つだそうです。再話された田中尚人さんによると、この物語集はさまざまな姿に形を変えて世界の昔話などに取り入れられてきました。日本の昔話の原典の一つがインドにあったということです。昔話の成り立ちに、あらためて感嘆します。(店主)
ねずみのよめいり インドにつたわるおはなし
田中尚人 再話
アンヴィル奈宝子 絵
玉川大学出版部
2021年4月15日発行
定価:2750円(本体2500円+税10%)
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