ブログの説明

絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2021年9月30日木曜日

【本の紹介】もりにきたのは




 森に白い動物が迷い込みました。見たこともない生き物の出現に、森の動物たちは恐れ慄きます。

 しかも奇妙な行動を取るようになりました。葉っぱを集め始めたのです。やがて白い動物は「リーフ」と呼ばれるようになります。「はっぱ」という意味です。葉っぱを身につけて走り出し、空を飛ぼうとするリーフ。始めはこわがっていた森の動物たちですが、リーフの話に耳を傾けます。

 リーフはシロクマでした。北極近くに暮らすシロクマがなぜ森に? 溶けた氷に乗って海の上を流されて来たようです。リーフは空を飛んで、家族がいる家に帰ろうとしていたのです。森の動物たちは、事情が分かると家まで帰れるように手伝ってあげることにしました。大勢のカラスによって空を飛ぶリーフ。何とか家に帰れたようです。

 絵の美しさに引き込まれる絵本です。深みのある色使いが見事です。気候の温暖化や、自然環境の変化に関わるテーマも取り入れたお話です。(店主)


もりにきたのは

サンドラ・ディークマン 作

牟禮あゆみ 訳


春陽堂書店

2021年9月16日発行

定価(本体1900円+税)

【本の紹介】どれも みーんな アントニオ!




 自分を知るきっかけになる絵本です。知っているようで知らなかった自分がいることに気づきます。

 アントニオが一人、木の下で佇んでいます。そんなとき、アントニオはただの「男の子」。でも、パパとママといるとき、アントニオは大事な「むすこ」になります。おばあちゃんといるときは「まご」になるし、マルチダおばさんといるときは「おいっこ」になります。

 学校で授業を受けているとき、アントニオは「生徒」です。先生のお話をちゃんと聞かなくちゃいけないけど、そう思えば思うほど、ちゃんとできない。そんなときアントニオは「宇宙飛行士」になっています。空の上から、町、学校、クラス、それに自分を見ています。アントニオが見ている自分自身。それは、先生から叱られている小さな「地球人」でした。

 アントニオは本当にすごい。家に帰って1枚の紙に絵がいっぱいの楽しいお話を書けば「作家」になります。作ったお話を発表すれば、すばらしい「役者」になります。いろんなアントニオがいます。でも、どんなときでもアントニオは「たいせつな友だち」。この絵本の語り手の「ぼく」は

、どのアントニオもたった一人のかけがえのない存在であることを知っています。(店主)


どれも みーんな アントニオ!

スザンナ・マッティアンジェリ 文

アリアキアラ・ディ・ジョルジョ 絵


春陽堂書店

2020年10月15日発行

定価:本体1700円+税

2021年9月29日水曜日

【本の紹介】ちんあなごの ちんちんでんしゃ




 ちんあなごを愉快に描きます。ちんあなごたちがちんちん電車に乗って、広い海の中をのんびり走ります。海の生き物たちもたくさん描かれ、楽しく読める絵本です。

 ちんあなごは「からだのはんぶん すなのなか。かおだけ だして ゆーらゆら」。とても不思議なお魚です。そんなちんあなごたちに人気の乗り物がちんちん電車です。ちんあなごたちは砂に埋もれたまま、いろいろなところに行けるのです。

 とてもこわがりのちんあなご。電車がちょっと揺れただけで運転手さんがベルを「チン!」と鳴らすと、ちんあなごはビックリしてみんな砂の中に引っ込みます。おやおや、運転手さんのちんあなごまで隠れてしまいました。ちんちん電車はしばらくストップ。安全だと分かったら、また出発します。

 ハラハラドキドキのちんちん電車。無事に終点まで着きました。でもすぐに折り返し運転で、今来た線路を引き返します。「チーンチン♪」、どうぞ気をつけて! (店主)


ちんあなごの ちんちんでんしゃ

作 大塚健太

絵 くさかみなこ


講談社

2021年6月11日発行

定価:本体1450円(税別)

2021年9月25日土曜日

【本の紹介】マートくんのレストラン




 ハラハラドキドキの出来事を、人の心のやさしさでふんわり包み込んだお話です。子どもの成長を願う作者の気持ちが伝わります。

 美味しそうなパンの匂いに誘われて、マートくんや近所の子どもたちがパン屋さんに引き込まれます。綺麗なお姉さんのパン屋さんは、実は子どもを食べてしまう恐ろしい魔女でした。

 危機が迫るそのとき、魔法使いのおじさんが現れて子どもたちを救います。でも、魔法使いは魔女を退治しないで助けます。そして、「悪い まほうは入って いないから」といって子どもたちにパンを食べさせます。魔法で、にじ色のジュースも出してあげました。

 大人になったマートくんはレストランのコックさんになりました。でも、あのときのパンとジュースほど美味しい料理はまだ作れていないといいます。最後に、このお話の語り手はマートくんの娘さんだったことが明かされます。娘さんはおとうさんの背中をやさしく見つめています。そしてマートくんのお話は、この絵本を読んだ子どもたちにも伝えられていくのです。(店主)


マートくんのレストラン

作・たざわたえこ

絵・ひすいしょう


銀の鈴社

2021年7月7日発行

定価:本体1800円+税

2021年9月24日金曜日

【本の紹介】空飛ぶ馬と七人のきょうだい モンゴルの北斗七星のおはなし




 モンゴルの民話をもとに創作されたお話です。モンゴルの自然を舞台に、不思議な力を持つ7人の兄弟が大活躍します。絵はユーモラスに見えても繊細で美しく、絵本の魅力を深めています。

 その昔、空に星はなく、夜は暗闇に被われていました。モンゴルの草原に、王様と7人の王女が住んでいました。王女たちは明るく輝き、夜の暗闇に光を灯していました。

 ある日の晩のこと、鳥の王のハンガリドが王女たちを見つけ、天に連れ去ってしまいます。王様は草原に暮らす7人の兄弟を呼び寄せ、王女たちを連れ戻すように命じます。兄弟たちは翼が生えて空を飛べるようになった馬とともに、王女たちを探す旅に出発します。

 お話は意外な結末を迎えます。暗闇だったモンゴルの夜空に、なぜ今、北斗七星やたくさんの星たちが輝いているのか明らかになります。モンゴルの草原が生み出した壮大な発想のお話をじっくり味わいましょう。(店主)


空飛ぶ馬と七人のきょうだい モンゴルの北斗七星のおはなし

イチンノロブ・ガンバートル 文

バーサンスレン・ボロルマー 絵

津田紀子 訳


廣済堂あかつき

2021年6月25日発行

定価:本体1600円+税

2021年9月23日木曜日

【本の紹介】あいちゃんのひみつ ダウン症をもつあいちゃんの、ママからのおてがみ



 この絵本は、多くの子どもたちがダウン症という障害について理解を深められるようにという願いを込めて作られました。障害は理解することで乗り越えられるハードルになります。多くの子どもたち、そして大人たちにも読んでいただきたい絵本です。

 静岡県伊豆の国市に暮らす小学生の「あいちゃん」はダウン症を持っています。学校には「ダウンしょうって なあに?」と聞いてくるお友だちもいます。あいちゃんのおかあさんはダウン症が起こる仕組み、つまりあいちゃんのからだのひみつについて、学校の授業でお話しすることになりました。

 あいちゃんのおかあさんはこの絵本の作者の竹山美奈子さんに相談して、この絵本のもとになるスライド絵本ができあがりました。ダウン症に関する情報は決して少なくないのかもしれませんが、どんなつらさがあるのか、どんな支援を必要としているのか、どう接したらいいのかなどについて、十分に知られていない状況があります。竹山さんはあいちゃんのおかあさんからよくお話を聞いて、まわりの人に知ってほしいこと、どんな支援がほしいのかを伝えようと考えました。そして、外見の特徴や、ダウン症という名称によって生じるつらさも知ってほしい思いました。

 この絵本は染色体のことも取り上げています。ヒトの染色体は2本で1組になっていて、全部で23組あります。ダウン症を持つ人はその中の21番目の染色体が、なぜか3本あるのです。染色体の話は、小さい子どもには少し難しいかもしれません。でも竹山さんは、子どもたちはダウン症の仕組みを通じて、一人ひとりの人間にそれぞれの仕組み(ひみつ)があり、それぞれの特徴を作っていることに気づき、それを大切に思うようになると考えました。竹山さんの子どもたちに対する信頼感に共感を覚え、清々しい気持ちになります。(店主)


あいちゃんのひみつ ダウン症をもつあいちゃんの、ママからのおてがみ

取材・文 竹山美奈子

絵 えがしらみちこ

監修 玉井邦夫


岩崎書店

2020年3月31日発行

定価(本体1600円+税)

2021年9月22日水曜日

おじいちゃん、おばあちゃんは素敵だ!


 くわのみ書房では毎月、テーマごとに絵本を紹介する書棚を設けています。9月のテーマは「おじいちゃん おばあちゃん」。年を取っても、明るく楽しく、元気に過ごしたいですね。絵本に登場するおじいちゃん、おばあちゃんは素敵な人たちばかりです。絵本の選書は、いつものように絵本の読み聞かせを行うユニット、《えほんの木》にお願いしました。(店主)

2021年9月18日土曜日

【本の紹介】クジラまつり




 クジラ漁を営む人々を描いた絵本です。クジラの命と引き換えに生を得ている人々は、命の意味を理解し、生きる喜びをいっそう深く感じているのかもしれません。

 かつてクジラ漁が盛んに行われていた紀伊国のお話です。紀伊国は、今の日本の和歌山県に当たります。ある年の正月、明日はクジラまつりという日に、浜辺近くに母親と父親、そして子どものクジラ3頭が泳いできました。

 クジラだけではありませんでした。シャチがクジラを襲っています。シャチは子どもクジラにかぶりつき、海がぱあっと赤くなります。まるで煮えたぎるように、ぐらぐら湧きかえっています。もりうちの「いえもん」が、このことを村人たちに知らせます。クジラは村人たちにとって、守るべき命。村人たちとシャチの戦いが始まります。

 シャチは追い払われました。でも、母親と子どものクジラの姿は見えません。父親の命も絶えたようです。残念ながら、クジラを助けることはできませんでした。でも、村人たちに父クジラが残されました。村人たちは、素直にそのことを喜びます。クジラから油を絞り、肉は塩漬けにします。血は畑の肥やしになり、髭や筋、骨までが役に立ちます。クジラにいらないものは何一つない。福の神のように村を豊かにしてくれます。クジラはまさに宝の山なのです。

 クジラまつりの日、また親子2頭のクジラが現れました。でも、いえもんの呼びかけで、村人たちは獲ることは控えます。いえもんは「クジラもまた いきていますのじゃ」と諭します。村人たちはクジラとともに生きているのです。

 1973年に発行された作品の復刊です。「クジラむかしむかし三部作」の第3作です。三部作は「ひよりじいさん」と呼ばれる年寄りの語り部が語るお話とされています。最後に、ひよりじいさんはいえもん本人であったことが明かされます。(店主)


クジラまつり

川村たかし/文

赤羽末吉/絵


BL出版

2019年3月20日発行

定価 本体1600円+税

【本の紹介】もりくいクジラ




 壮絶なクジラ漁を描いた絵本です。迫力のある絵は人間が備えるユーモラスな一面も伝え、絵本の世界に深みを与えていると思います。

 かつて日本の今の和歌山県は紀伊国と呼ばれ、クジラ漁が盛んに行われていました。ある村に一番のクジラとりといわれた「いえもん」、そしていえもんを「おやじさん」と呼んで慕う若者の「そうだゆう」がいました。二人は一頭の大クジラを仕留めようと考えていました。

 その大クジラの背中には1本の銛が立っています。以前にも浜辺に来たことのあるクジラに違いない。村人たちはそう考え、このクジラを「もりくい」と呼んでいました。もりくいは毎年のように群れを連れて来ます。でも、とても賢く、決して浜辺に近寄ろうとはしません。もりくいのせいで、村では獲物がすっかり少なくなったのです。

 その年の冬も、もりくいは大勢の群れを連れてやってきました。村人たちは何十という船を並べて海に出ます。一番前を行く船にはいえもん、二番目の船にはそうだゆうが乗っています。いえもんが怒鳴ります。「よいか、もりくいだけが あいてだぞ。ほかの クジラには みむきも するな」

 戦いは終わります。もりくいは、ぐったりと力尽きます。「わるかったのう、ゆるしてくれ」という、いえもんのつぶやきが胸に突き刺さります。クジラの命と引き換えに、人間は生をつないでいく。そこにある悲しみに思いを馳せ、あらためて生きる意味を考えたいと思います。

 1973年に発行された作品の復刊です。「クジラむかしむかし三部作」の第2作です。(店主)


もりくいクジラ

川村たかし/文

赤羽末吉/絵


BL出版

2019年3月20日発行

定価 本体1600円+税

【本の紹介】あみかけクジラ




 かつて日本で盛んに行われていたクジラ漁を題材にした絵本です。生活の糧を得るため、果敢にクジラ漁に挑む人々を描きます。ダイナミックなお話と絵が、読む人を絵本の世界に引き込みます。

 お話の舞台は、今の和歌山県に当たる紀伊国です。山に囲まれた入江に村がありました。入江には大きなクジラが姿を見せることがありました。貧しい村人たちは「あの、でっかい やつを しとめることができたら、ちっとは くらしも らくになるがのう」と悔しがりました。

 村には「でんじ」という大男がいました。腕っぷしが強く、飲んだくれの暴れ者。でも、魚をとることにかけては村の誰もが敵いません。海に出るときはいつも一人でした。一方、「いえもん」という男は、みんなで力を合わせてクジラとりをしようと呼びかけます。いえもんは網を使った漁を考えます。

 季節は巡り、たくさんのクジラが入江の近くにやって来ました。村人総出のクジラ漁が始まります。最初は一人でクジラに挑んだでんじも、クジラの網かけに協力するようになります。壮絶な戦いの末、息絶えるげんじ。死に際に、息子の「そうた」の将来をいえもんに託します。

 そして、村人たちは命がけで子を守った母クジラの姿も目の当たりにします。子どもクジラは、でんじが放った1本の銛を背中に刺したまま逃げ切りますが、母クジラは子どもクジラをかばうように銛を受け止め、村人に連れ去られます。村人たちは、涙を流しながら母クジラに銛を投げていたのです。

 1973年に発行された作品の復刊です。「クジラむかしむかし三部作」の第1作です。(店主)


あみかけクジラ

川村たかし/文

赤羽末吉/絵


BL出版

2019年3月20日発行

定価 本体1600円+税

2021年9月16日木曜日

【本の紹介】コケのすきまぐらし(たくさんのふしぎ2021年10月号)




 俄然、コケに興味が湧いてくる絵本です。コケの観察が趣味という作者が、その魅力をたっぷり紹介します。


 今すぐコケの観察に出かけたくなります。できればルーペを持って! 遠目にはどれも同じように見えても、コケは色も形もさまざま。多くのコケには茎も葉っぱもあり、ルーペで観ると1本1本がまるでミニチュアの樹木のように見えるそうです。


 コケにはしっかりとした根がありません。髭のような糸くずのような、ひょろひょろとした仮根で地面や石垣などに張り付いています。水や養分は体の表面全体から取り込みます。ただ、長い時間、体の中に水分を貯めておくことはできません。あっという間に乾いてしまうのですが、次に雨が降ったら元の姿に戻ることができます。晴れた日は、乾いたときの状態を観察できるだけでなく、霧吹きなどで水分を与えれば湿った状態になり、両方を観察することができるそうです。


 作者の田中美穂さんは、岡山県倉敷市にある蟲文庫(むしぶんこ)という古書店の店主です。私は数年前、ここで村上春樹訳のレイモンド・カーヴァー作品の単行本を見つけて購入しました。私としては掘り出し物だと喜んだ次第です。この絵本に描かれている倉敷の風景も懐かしく思い出しました。(店主)


コケのすきまぐらし

田中美穂 文

平澤朋子 絵


福音館書店

2021年10月1日発行

定価770円(本体700円+税10%)

2021年9月14日火曜日

【本の紹介】きのこのこ(こどものとも0.1.2. 2021年10月号)




 カラフルなきのこの子どもたちが弾むようにお散歩します。リズミカルな文章でウキウキした気持ちになる絵本です。

 きのこたちの頭は色違いのギンガムチェック。「とっとこ とことこ」進みます。

 仲良し兄弟のきのこのこ。丸太ばしがこわくて渡れないちびちゃんをお兄ちゃんがおんぶしてくれました。

 着いたところは広い公園。お友だちもたくさん来ています。きのこのこたちがどこにいるのか、探しっこ遊びで楽しみましょう。(店主)


きのこのこ

得田之久 文

ザ・キャビンカンパニー 絵


福音館書店

2021年10月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2021年9月11日土曜日

【本の紹介】あきをみつけたよ(こどものとも年少版2021年10月号)




 秋の魅力がいっぱい詰まった絵本です。一つひとつ確かめながら、季節の変化を楽しみましょう。

 最初に秋の花を紹介しています。付録の「作者のことば」にあるように、秋の花はどこか控えめです。公園などで見かける花たちは、爽やかな風とともに、私たちの心を静めてくれます。

 秋は美味しいものもたくさんあります。栗ご飯にきのこご飯、そしていろいろなくだものが紹介されています。見ているだけでお腹いっぱい?! いえいえ、やっぱりみんな食べたくなりますね。

 季節は巡り、時は流れる。今を大事にすることが、生きることそのものだと思います。(店主)


あきをみつけたよ(こどものとも年少版2021年10月号)

平野恵理子 さく


福音館書店

2021年10月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

【本の紹介】こだぬきぽんたの ほしいもの(こどものとも年中向き2021年10月号)




 子どものたぬきの冒険ストーリーです。冒険を積み重ねることで子どもは成長していきます。

 里山で暮らす子だぬきのぽんたは、ある日、林の中で白い猫と出会います。猫が首に付けていた玉からチリンチリンと綺麗な音が聞こえてきます。ぽんたはそれが欲しくて欲しくてたまりません。

 ぽんたのおかあさんが「それは すずというものよ」と教えてくれました。ぽんたはおかあさん、そして妹のぽんこと、鈴を探しに人間の町まで出かけていきます。ぽんたは、鈴に似ているものと出会いますが、どれも違うようです。やがて、おかあさんたちとはぐれてしまったぽんた。鈴を探し出すことはできるのでしょうか、またおかあさんたちと再び会えるようになるのでしょうか。

 迫力のある絵です。たぬきたちの生き生きとした表情に惹きつけられます。子だぬきの成長に勇気づけられる絵本です。(店主)


こだぬきぽんたの ほしいもの(こどものとも年中向き2021年10月号)

たけがみたえ


福音館書店

2021年10月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2021年9月10日金曜日

【本の紹介】野ばらの村のけっこんしき




 「野ばらの村の物語」四季シリーズの2冊目です。イギリスの田園に暮らすねずみたちを描いた絵本です。心豊かなねずみたちが生きる喜びを私たちに伝えます。

 ねずみたちが暮らす野ばらの村は夏を迎えました。村のみんなは大喜びしています。チーズ小屋で働くポピー・アイブライトと、粉ひき小屋で働くダスティ・ダックウッドが「わたしたち、結婚します」と発表したからです。

 結婚式は、チーズ小屋と粉ひき小屋の近くを流れる小川の上で行われることになりました。涼しいし、特別な感じもします。早速、ダスティは大きくて平らな木の皮を見つけてきて、いかだを作ります。

 いかだの上で素敵な結婚式が行われました。そのあとはいよいよ楽しいダンスと美味しいご馳走のパーティの始まり! 丁寧に描かれた深みのある絵が、私たちの心も幸せいっぱいにしてくれます。(店主)


野ばらの村のけっこんしき

ジル・バークレム 作・絵

こみやゆう 訳


出版ワークス

2021年8月25日発行

定価 本体1600円(税別) 1760円(10%税込)

【本の紹介】野ばらの村のピクニック




 舞台はイギリスの田園。素朴ながら心豊かに暮らすねずみたちを描いた絵本です。「野ばらの村の物語」四季シリーズの春のお話です。

 ねずみたちは野ばらの村で暮らしています。美しい春の日、今日はシデの木の家に住むウィルフレッドの誕生日です。ウィルフレッドはおとうさんとおかあさんからプレゼントをもらって大喜び。さらにウィルフレッドを喜ばそうとピクニックも計画されました。

 ピクニックには村のみんなが参加します。でもお祝いをすることは、ウィルフレッドには内緒です。さて、どんなピクニックになるのでしょう。

  構成のしっかりとしたお話と丁寧に描かれた絵が読む人を別世界に導きます。時間がゆっくり流れる空想の世界が私たちの心を開放します。(店主)


野ばらの村のピクニック

ジル・バークレム 作・絵

こみやゆう 訳


出版ワークス

2021年6月25日発行

定価 本体1600円(税別) 1760円(10%税込)

2021年9月8日水曜日

【本の紹介】いなりまちゆき きつねでんしゃ(こどものとも2021年10月号)

 


 ハラハラドキドキのお話に引き込まれます。躍動感あふれる絵がお話をさらに盛り上げます。

 一人で電車に乗っておじいちゃんのところに遊びに行くことになった「こうすけ」。駅の4番線で発車ベルが鳴り響きます。

 こうすけが乗った電車は「ガタン ゴトン ガタン ゴトン」と走り続けます。でも何かようすが変です。あたりがだんだん暗くなり、窓の外は見慣れない景色が広がります。終点の「いなりまち」に着くと、まわりのお客さんはみんな、きつねになっていました。

 いなりまちは、きつねの町。こうすけは無事、人間の世界に戻ることができるのでしょうか。絵は遊び心満載です。読み応えのある絵本です。(店主)


いなりまちゆき きつねでんしゃ(こどものとも2021年10月号)

鍋田敬子 作


福音館書店

2021年10月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2021年9月7日火曜日

【本の紹介】母の友2021年10月号




 「母の友」2021年10月号の巻頭のエッセイに力付けられました。画家・イラストレーターのMAYA MAXXさんが昨年7月、北海道に引っ越した経緯を語ります。

 移転先は北海道岩見沢市の美流渡という集落。当初は東京と美流渡を行き来するつもりだったようです。そこにコロナ禍が発生。往来は自粛せざるをえない状況となり、美流渡への移住を決めました。

 還暦を迎え、目に見えない衰え、人生における飽きを感じていました。MAYA MAXXさんはそれを乗り越えるためファンタジーの力を借りようと決意。今回の移住を「冒険」と捉え、自らをその主人公に仕立て上げます。

 MAYA MAXXさんと同じようにファンタジーの世界に飛び込もう。そして、ワクワクする気持ちで生きる喜びをもっと膨らまそう。還暦はとっくに過ぎている私ですが、「冒険」する気持ちを持ち続けようと決めたのでした。(店主)


「母の友」2021年10月号


福音館書店

2021年10月1日発行

定価580円(本体527円+税10%)

2021年9月3日金曜日

【本の紹介】おなじ星をみあげて




 日本のコマ割り漫画のような形式で描かれている作品です。フランス語圏ではこのような作品が数多く作られ、バンド・デシネと呼ばれているそうです。

 お話はラブストーリーです。宇宙のことが大好きな少年が、やはり宇宙のことが大好きな少女と出会い、お互いに惹かれ合います。宗教や人種、親の価値観などで別れ別れとなった二人。でも宇宙への想いが、再び二人を結びつけます。

 宇宙飛行士の山崎直子さんが推薦の言葉を寄せています。「慣習、宗教、人種、親の価値観など、どんなに分断されようとも、おなじ星を見上げると、私たちは同じ地球に生まれているんだ、と普遍的な共通点を感じます。そして、私たちも宇宙の一部なのだと感じ、謙虚な気持ちになります」。素晴らしい視点だと思います。

 私自身、この作品で描かれていることが必ずしもすべて十分に理解できていないようで、もどかしく思います。でも、素敵なハッピーエンドで爽やかな気持ちになります。(店主)


おなじ星をみあげて

ジャック・ゴールドスティングレイ 作・絵

辻仁成 訳


春陽堂書店

2021年8月14日発行

定価(本体2000円+税)


2021年9月1日水曜日

【本の紹介】あなたがおとなになったとき




 大人になった子どもに語りかける絵本です。子どもにはいつも青い鳥が寄り添っています。

 人生は「おもいがけないものでいっぱいの森」。子どもは、そんな森の奥深くに踏み込み、駆け抜けて行こうとします。未来の自分に何が待っているのか分からないのに。

 でも、小鳥たちが夜明けに歌っています。小鳥たちは知っているのです。何億の夜を超えて、ただ一度だけの今日が始まることを。

 あなたがおとなになったとき、どうぞ小鳥たちの歌に耳をすませて欲しい。この絵本がやさしく語りかけています。(店主)


あなたがおとなになったとき

湯本香樹実 文

はたこうしろう 絵


講談社

2019年7月29日発行

定価:本体1400円(税別)

【ご案内】子どもの本のろうどく会 vol.9

 くわのみ書房は「子どもの本のろうどく会 vol.9」を開催します。「子どもに語る アンデルセンのお話」(こぐま社)の中からお話を一つ、くわのみ書房のスタッフが声に出して読みます。子どもだけでなく、大人の方もお気軽にご参加ください。 ■日 時:2024年5月4日(土)午前11時~...