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絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2022年10月27日木曜日

【本の紹介】和ろうそくは、つなぐ




 とても読み応えのある写真絵本です。和ろうそく作りからつながる、何も捨てることがない物作りをたどります。

 和ろうそくは職人が一本一本手作りしています。和ろうそくの蝋(ろう)は、ハゼの木の実をしぼって作ります。

 蝋をしぼった後、大量のしぼりカスができます。その蝋カスは藍染職人の仕事で使われます。藍染の染液が入る甕(かめ)を温めて、染液の発酵を助けます。藍染職人は染液を新しく作るとき、木の灰を大量に使います。使用後に残ったたくさんの灰は別の職人の手に渡ります。陶器を作るときの釉薬に混ぜるのです。

 このように日本で昔から続く物作りの過程では捨てるものがありません。この絵本の作者は「土に還る大きな循環がある」と指摘します。伝統的な物作りのよさを知ることは、今を生きる私たちにとっても大切なことだと思います。(店主)


和ろうそくは、つなぐ

大西暢夫


アリス館

2022年2月28日発行

定価(本体1,500円+税)

2022年10月26日水曜日

【本の紹介】橋の上で




 誰でも生きづらさを感じるときがあります。死んでしまいたい気持ちになったとき、人はみずうみを見るようになる。この絵本がそう教えてくれます。

 自分だけのみずうみです。その水は暗い地底の水路を通って自分のもとにやって来ます。みずうみの冷たい水は身体中、すみずみまでくまなくめぐります。

 耳を「ぎゅう」と強く塞いでみると、遠くからやってくる水の音が聞こえます。それは生きている証です。やがて、みずうみがはっきり見えてくるでしょう。水が湧き出し、波紋を作っています。

 水辺は明るく、たくさんの人たちが思い思いに過ごしています。死んでしまったら会えなかった人たちです。あなたを見守ってくれる人たちです。この絵本は生きづらさを感じる人に確かな希望を届けます。(店主)


橋の上で

湯本香樹実 文

酒井駒子 絵


河出書房新社

2022年9月30日発行

定価[本体1500円](税別) 1650円(10%税込)

【本の紹介】ペティおばさんの台所




 愛情あふれるお話と柔らかいタッチの絵がとてもよくマッチして、幸せな気分になれる絵本です。主な舞台は台所。台所は家族みんなの幸せを生む場所です。

 ミルはとても食いしん坊。パパとママと一緒に、以前おばあちゃんが暮らしていたお家に引っ越してきました。

 ミルはお家の台所からクッキーのにおいがしてくることに気づきます。おばあちゃんのクッキーです。クッキーを焼いてくれたおばあちゃんはもういないはず。でも、その日の夜、ミルは台所でクッキーを焼く妖精を見つけます。小さな小さなおばさんの姿をした妖精です。

 この絵本の合言葉は「ボナ・ペティ!」。フランス語で「めしあがれ! おいしいじかんを!」といった意味合いです。クッキーの作り方も載っています。(店主)


ペティおばさんの台所

竹中マユミ


偕成社

2022年10月発行

定価[本体価格1400円+税]

2022年10月22日土曜日

【本の紹介】からまつ(かがくのとも2022年11月号)




 富士山の景観を形作るからまつの生態を描きます。その姿はたくましく、私たちに勇気を与えます。

 雪崩の後の荒地に芽を出すからまつ。芽生えたからまつが地面に根を張らせることは難しく、その多くは枯れてしまいます。でも、生き残ったからまつは何年もかけて背を伸ばし、やがて森を造り、その森に多くの生き物が住むようになります。この絵本の文章を書かれたのは菅原久夫さん。からまつと富士山に向けた、たっぷりの愛情を感じます。

 菅原さんが付録の「作者のことば」でからまつについて解説しています。その解説で初めて知ることがありました。常緑ばかりと思っていた針葉樹で、からまつだけは葉が黄色くなり落葉すること。からまつが生えることができるのは陽の光が降り注ぐ荒れ地だけで、からまつは荒れ地に森を造る木の代表格であること。

 この絵本は端正な文章にダイナミックな絵が組み合わさったことで、その魅力が増したように思います。絵を担当された福井利佐さんは、付録のプロフィール欄で「切り絵アーティスト」と紹介されています。とすると、この絵本は切り絵の手法で描かれた絵で作られたのでしょうか。精密な描写と迫力ある構成、単純ながらリアリティを感じさせる色使いが見事です。(作者)


からまつ(かがくのとも2022年11月号)

菅原久夫 ぶん

福井利佐 え


福音館書店

2022年11月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2022年10月21日金曜日

【本の紹介】たこぼうのツーリング(こどものとも年中向き2022年11月号)




 迫力のある絵が読む人をぐいぐい引きつけます。絵本の世界をダイナミックに楽しみましょう。

 たこの親子のお話です。たこぼうのパパは看板屋。看板が出来上がると、うれしそうにバイクで運びます。

 パパは仕事が忙しく、たこぼうはなかなか一緒に遊んでもらえません。でも今、パパが作っているのは、看板ではないみたい。夕方、パパがいいました。「よし、たこぼうの サイドカー かんせい!」

 サイドカーとはバイクの横に取り付ける乗り物のこと。パパはたこぼうをサイドカーに乗せて、夜明け前のツーリングに出かけます。たこぼうたちと一緒に、スリル満点のバイクの旅に出発です。(店主)


たこぼうのツーリング(こどものとも年中向き2022年11月号)

尾崎玄一郎 尾崎由紀奈 作


福音館書店

2022年11月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2022年10月20日木曜日

【本の紹介】きのみのぼうけん(こどものとも2022年11月号)




 本物のどんぐりの写真で絵本を構成しました。作者の想像力の豊かさに圧倒されます。

 主人公は、お馴染みのどんぐり。コナラという木の実です。まだ未熟などんぐりたちが「きのしたの せかいを みにいこう」と飛び出します。

 写真のどんぐりたちが生き生きとお話をつむぎます。どんぐり以外の木の実の写真もたくさん使われています。迫力ある写真の表現に引き込まれ、私たちも深く広い絵本の世界でどんぐりと旅をすることになるのです。

 背景の色使いが秀逸です。ワクワクする楽しい舞台が表現されています。地味なイメージになりがちな木の実たちの表情も、明るく輝いているように思います。(店主)


きのみのぼうけん(こどものとも2022年11月号)

作 田島征三

撮影 酒井敦

デザイン 成瀬慧


福音館書店

2022年11月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2022年10月19日水曜日

【本の紹介】くまさんとどんぐり(こどものとも0.1.2. 2022年11月号)




 主人公のくまさんと一緒に遊んでいるような気持ちになれる絵本です。どんぐりと出会い、楽しいひとときを過ごします。

 くまさんが「のっし のっし」と歩いています。頭の上に「ぽとん」と何か落ちてきました。

 「ころ ころ ころ」と転がって、くまさんも「まて まて まて」と追いかけます。捕まえてみると、それは子どもたちも大好きなどんぐり。くまさんも大喜びでした。

 単純化された絵と文で構成した絵本です。読む人の頭の中で絵本の世界が広がります。(店主)


くまさんとどんぐり(こどものとも0.1.2. 2022年11月号)

増田純子 さく


福音館書店

2022年11月1日発行

定価440円(本体400円+税10%)

2022年10月13日木曜日

今年も「おうえんカレンダー」を販売します!




 くわのみ書房は「12人の絵本作家が描くおうえんカレンダー2023」を販売します。1部1100円(税込)です。

 このカレンダーは2011年に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の影響から子どもたちを守ろうという趣旨で作られました。その趣旨に賛同した12人の絵本作家が作品を提供しています。

 今回、作品を提供した12人の絵本作家は、村上康成、酒井駒子、鈴木邦弘、荒井良二、どいかや、吉田尚令、あおきひろえ、降矢なな、市居みか、堀川理万子、出久根育、長谷川義史のみなさん。全国7カ所で開催予定の「カレンダー原画展」もすでに始まっています。

 カレンダーの販売収益は、被曝から子どもたちを守るための活動をしている団体に寄付されます。詳しい情報は一般社団法人応援カレンダープロジェクトのウェブサイト(http://12ehoncalendar.com)をご参照ください。(店主)

2022年10月11日火曜日

【本の紹介】リトル・ゾンビガール




 他者を思いやることの大切さを描いた作品です。分断された社会に生きる者がお互いを知ることで心を通い合わせる姿を描きました。古くて新しいテーマといえるかもしれません。でも、今あらためて、思い起こしたいテーマです。

 ショウは小学校4年生の男の子。大きな森が近くにある街に引っ越してきました。ショウが学校で出会った少女の名はノノ。実は、ノノはゾンビだったのです。ホラー映画などで描かれるゾンビといえば不死身で気持ちの悪い存在ですが、ノノは真っ白い肌、桜貝の色をした唇、そして真っ黒な大きな瞳の少女です。

 森で暮らしていたゾンビは、200年前の争いで人間に退治されてしまいました。でも、少数のゾンビが生き残り、ひっそりと生活していたのです。人間もまだゾンビがいるという言い伝えを恐れ、森に近づくことはありませんでした。ときは流れ、人間は森を開発してショッピングモールをつくろうとします。ゾンビたちは、生活の場を奪われると怒りを爆発。人間とゾンビの間に再び争いが生じます。人間とゾンビは平和に暮らすことができるのか。ショウとノノにその運命が託されます。

 なかなか友だちが出来なかった内気なショウ。好奇旺盛で思いやりの心を忘れないノノ。これは二人の成長の物語でもあります。ハラハラドキドキの展開を存分に楽しんでください。習志野市在住の作家、德野有美さんの作品です。(店主)


リトル・ゾンビガール

德野有美


NHK出版

2022年6月25日発行

定価:[本体1,100円]+税

【ご案内】子どもの本のろうどく会 vol.9

 くわのみ書房は「子どもの本のろうどく会 vol.9」を開催します。「子どもに語る アンデルセンのお話」(こぐま社)の中からお話を一つ、くわのみ書房のスタッフが声に出して読みます。子どもだけでなく、大人の方もお気軽にご参加ください。 ■日 時:2024年5月4日(土)午前11時~...