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絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2020年3月28日土曜日

【本の紹介】チンチラカと大男



 ジョージアの昔話の絵本です。ジョージアは、かつてグルジアと呼ばれていた国です。北と南をロシアとトルコに挟まれ、旧ソビエト連邦を構成した国の一つです。
 主人公のチンチラカは三人兄弟の末っ子です。知恵がまわることで町中の人たちに知られていました。でも暮らしは貧しく、三人は仕事を探しに出かけます。
 チンチラカのうわさは王様のところまで届いていました。チンチラカはすぐに王様から雇われます。でも、とんでもないことをいいつけられてしまいます。魔の山に住む大男から黄金のつぼを取ってこいというのです。大男はときどき里に降りてきて、畑を荒らしたり娘をさらったりして恐れられていました。
 その後のチンチラカの大活躍は痛快です。昔話ならではのダイナミックな展開にも驚かされます。スズキコージさんの迫力ある絵で、このお話がいっそう面白くなりました。(店主)

チンチラカと大男
片山ふえ・文
スズキコージ・絵

BL出版
2019年12月10日発行
本体1600円+税

2020年3月27日金曜日

【本の紹介】森のあかちゃん



 最初に読んだとき、不思議なお話の展開に戸惑うでしょう。でも、美しい絵に引き込まれ、この絵本の世界で幸せな気持ちに浸ることができます。
 お月さまが明るい夜、ある星から光が降りてきます。光は山を越えて森に入り、木の枝と枝の間を飛び跳ねて、「森のこみち29ばんち」まで行きました。
 森のこみち29ばんちに住んでいるのは、クマのおとうさんとおかあさん。二人が待ち望んでいたものが届けられたのです。それは、あかちゃんでした。でも、このあかちゃんは透き通った鉢の中にいます。鉢には水がたっぷり入っています。あかちゃんは、水の中で泳ぐさかなだったのです。
 ある家族がこの絵本のモデルになりました。養子に迎え入れた赤ちゃんが、やがてアラン・ハーンドン・ダドリー症候群(AHDS)という非常に稀な脳の難病を発症した家族です。この家族の子どもは、まるで魚のように水の中にいることが大好きだそうです。絵本ではクマのおとうさんとおかあさん、そして森の仲間たちが、さかなのあかちゃんと一緒に楽しく過ごせる場所を見つけます。もちろん、そこは水の中。一緒に飛び込めない仲間もいるようですが、さかなのあかちゃんはとても幸せそうです。(店主)

森のあかちゃん
文/コゼッタ・ザノッティ
絵/ルチア・スクデーリ
訳/佐藤まどか

BL出版
2019年6月20日発行
本体1600円+税

2020年3月25日水曜日

【本の紹介】アラスカで一番高い山 デナリに登る(たくさんのふしぎ2020年4月号)



 最初は「デナリ」という名前にピンときませんでした。以前は「マッキンリー」と呼ばれていたとの記述から、冒険家の故植村直巳が最後に挑んだ山であることを知りました。
 デナリは北アメリカ大陸の最高峰で、北極にも近く、頂上付近は夏でもマイナス20度になるそうです。いうまでもなく、気候条件はたいへん厳しい。それでも、この山は世界中の人々を惹きつけ、多くの登山家が挑みました。そして、そのうち何人もの人が帰らなかったといいます。
 この写真絵本はデナリ登山の記録です。作者の石川直樹さんにとって2回目のデナリは一人で行く単独行でした。石川さんはなぜ、たった一人で2回目に挑んだのでしょうか。頂上に近づくにつれ、石川さんには相反する感情が湧いてきたようです。最後の斜面で「寒いし、ちょっとこわい。でもうれしい」。頂上では「こわいけど、気持ちいい。不安だけど、うれしい。苦しいけど、おだやか。さみしいけど、楽しい」。石川さんの素直な気持ちがつづられています。
 吹雪の風景に息を呑まされます。何も見えないのです。「左右がわからなくなるだけじゃなくて、上下もわからなくなって、しろい宇宙に放り出されたように感じる」と石川さんは描きます。吹雪が止んで後ろを振り返ると、そこには自分の足跡だけがありました。大きな自然の中で、ちっぽけだけど、確実に自分がいたことの証を見出したのでしょう。(店主)

アラスカで一番高い山 デナリに登る(たくさんのふしぎ2020年4月号)
石川直樹 文・写真

福音館書店
2020年4月1日発行
本体700円+税

2020年3月22日日曜日

【本の紹介】ちょうが すきなもの しってる?(ちいさなかがくのとも年中向き2020年4月号)


 蝶が好きなものって何でしょう? それは花の蜜。春になれば、タンポポやシロツメクサ、ハルジオンなど野の花を求めて飛び回る蝶の姿を見ることができます。
 夏には大きなユリの花に、大きな蝶がやってきます。小さなヤブカラシの花にも蝶がたくさん集まります。秋の花が咲く花壇にも蝶がやってきました。花だけではありません。夏には樹液、秋には地面に落ちた柿の実にも蝶が集まります。
 紹介されているのは身近に見られる蝶や花ばかり。図鑑のように一つひとつ丁寧に描かれ、まるで本物をじっくり観察しているみたいな気持ちになります。見開きページごとの絵はダイナミックな構成で見応えがあります。
 たくさんの種類の蝶と野の花を学べる絵本です。学ぶことは大きな楽しみでもあります。ページをめくるたびに知識が増えてワクワクしてきます。(店主)

ちょうが すきなもの しってる?(ちいさなかがくのとも年中向き2020年4月号)
松岡達英 さく

福音館書店
2020年4月1日発行
本体400円+税

2020年3月20日金曜日

【本の紹介】もぐたさんのたんぽぽさんぽ(こどものとも年中向き2020年4月号)



 春を楽しむ絵本です。春の色が満載です。
 表紙からお話が始まります。家のドアを開けて出てきたのは、もぐらのもぐたさん。お弁当をくくりつけたスコップを肩にかけ、これから「たんぽぽのはら」までお出かけのようです。たんぽぽのはらに行くお散歩だから「たんぽぽさんぽ」です。
 たんぽぽのはらは、たんぽぽが一面に広がる原っぱです。もぐたさんのお友だちも大好きな場所です。一緒に行かせてと大勢の仲間たちが集まりました。
 もぐたさんは「んぽ んぽ んぽぽ」とリズミカルに歌いながら、たんぽぽのはらを目指します。春になってウキウキしてくる気持ちが伝わります。もぐたさんと一緒に歌いながら、春の訪れを楽しんでください。(店主)

もぐたさんのたんぽぽさんぽ(こどものとも年中向き2020年4月号)
小野寺悦子 文
伊藤夏紀 絵

福音館書店
2020年4月1日発行
本体400円+税

2020年3月19日木曜日

【本の紹介】こいぬのこたろう(こどものとも2020年4月号)



 子犬のこたろうは遊ぶことが大好きです。ちょっと羽目を外してまわりをはらはらさせてしまうこともありますが、子どもだったらこたろうの気持ちはよく分かるはず。こたろうと一緒に思いっきり遊べる絵本です。
 こたろうがお昼寝から目を覚ますと、家には誰もいませんでした。リビングに行くと窓は開いたまま。庭をみると塀の上で猫が昼寝をしています。猫と遊びたくなったこたろうは、窓から外に飛び出します。
 いったん外に出たら、こたろうはもう止まりません。自転車と競争したかと思えば、次はトラックを追いかけます。でも、ビルの工事現場で、クレーンに持ち上げられている鉄骨に乗ってしまうなんて、こたろうはやり過ぎ!
 テンポよく場面が変わり、お話を飽きさせません。こたろうは、どんなときでもニコニコしていて楽しそう。そんなこたろうを見ていると、みんなが元気になれそうです。(店主)

こいぬのこたろう(こどものとも2020年4月号)
鍋田敬子 さく

福音館書店
2020年4月1日発行
本体400円+税

2020年3月18日水曜日

【本の紹介】むしとりあそび(かがくのとも2020年4月号)



 虫たちは子どもたちのよい遊び仲間です。虫とりをしたり、捕まえた虫を飼ったりして、虫と仲よしになります。この絵本を読んで、虫たちともっと仲よくなりましょう。
 虫とりのやり方が具体的に描かれています。虫とり網などの道具がなくても、虫を捕まえることができます。道具を使えば、もっといろいろな楽しみ方ができるようになります。
 くもの巣を使った網の作り方も教えてくれます。二股に分かれた木の枝を見つけてきて、枝の間にくもの巣を巻き付ければでき上がり。この網を使えば、飛ぶ虫も簡単に捕まえることができそうです。
 飛ばないで歩く虫を捕まえるには、落とし穴を使うのがよいようです。道の横にある溝に虫が落ちていれば、落とし穴でとれる虫たちが近くにいる証拠。空かんやコップを土に埋めて落とし穴をつくりましょう。虫のことがもっとよく分かってくれば、虫とりはもっと面白く楽しくなります。虫とりを始めるきっかけになりそうな絵本です。(店主)

むしとりあそび(かがくのとも2020年4月号)
井上大成 ぶん
中田彩郁 え

福音館書店
2020年4月1日発行
本体400円+税

2020年3月15日日曜日

【本の紹介】「母の友」2020 年4月号



 絵本作家の五味太郎さんのインタビュー記事が「母の友」4月号に掲載されています。8ページに及ぶ長い記事ですが、読み応え十分です。
 五味さんがおっしゃることの一つひとつに肯いてしまいました。例えば、本はモノとしての「たたずまい」が大事だということ。本をまず手に取って、紙の質感を感じながら表紙や裏表紙を見る。全体のたたずまいを見て「うーん、なんかいいなあ」って思う。そこから本の楽しみが始まる。絵本も本であり、子どもたちにも、そのたたずまいから楽しんでもらいたいと思います。
 子どもにとって絵本とは何かを考察する中で、「本を選ぶよろこび、自分に合う絵本に出会う楽しさ」は「自己発見」につながると指摘したことにも、眼から鱗が落ちる思いでした。さらに、それは自分以外のほかの人に触れるよろこびでもあるといっています。絵本は、子どもたちが自分という人間を形作っていく上で一つの手段となる。その上で、絵本を提供する側の大人は、子どもたちに「わからせよう」「理解させよう」「導こう」などと考えず、子どもたちに「礼節」を持って接することが大切ともいっています。
「母の友」は4月号から新年度がスタートします。新しい連載も数多く始まりました。どうぞ手に取ってご覧ください。(店主)

「母の友」2020年4月号

福音館書店
本体527円
2020年4月1日発行

2020年3月11日水曜日

【本の紹介】ノロウェイの黒牛



 イギリスのスコットランドに伝わる昔話の絵本です。美しい娘とノロウェイの黒牛の恋の物語です。
 ノロウェイの黒牛は身の毛もよだつといわれる怪物です。でも、その本当の姿は、気高くうつくしい王子でした。王子と結婚したいと考えた魔女から呪いをかけられ、黒牛に姿を変えられていたのです。
 娘のやさしさが王子にかけられた呪いを解かし始めます。夜の間は人の姿でいられるようになりました。でも、王子はすべての呪いを解くためまだやり残したことがあるといって、魔物との戦いに挑みます。娘は王子を待ち続けましたが、再び出会うことはなかなかできません。やがて娘は一人立ちあがり、広い世界の果てまで王子を探しに歩き始めます。
 この絵本をつくったのはお二人の日本人。お話はダイナミックに展開し、私たちを引き込みます。絵はお話の内容をしっかりと支え、深みのある作品に仕上がりました。絵を担当されたさとうゆうすけさんにとって、この作品は絵本のデビュー作になるそうです。(店主)

ノロウェイの黒牛
なかがわちひろ 文
さとうゆうすけ 絵

BL出版
2019年3月10日発行
本体1600円+税

2020年3月8日日曜日

【本の紹介】ジュマンジ



 子どもたちが公園の木の根元でボードゲームを見つけました。子どもたちは、ありふれたゲームと思いながら遊び始めます。でもそれは、非現実の出来事を現実の世界に引き寄せるゲームでした。
 ボードゲームには、四角いマスをつなげた道が描かれています。道は深いジャングルから始まり、黄金の建物や塔が並ぶ都市で終わります。その都市の名前がジュマンジです。プレーヤーはサイコロを転がし、マスに置いたコマをサイコロの数だけ進めます。
 コマが止まる一つひとつのマスに文章が書かれています。例えば「ライオンがおそいかかる。ふたつうしろにもどる」。ゲームを始めた子どもたちがびっくりします。後ろを振り向くと、部屋の中のピアノの上に、実際にライオンが座っているではありませんか。もうゲームから抜け出すことはできません。解説書には「ジュマンジ・ゲームをいったんはじめたら、だれかがその黄金の都市にとうちゃくするまで、そのゲームがおわることはない」と書いてあったのです。
 奇妙なボードゲームが私たちを不思議な世界に導きます。恐怖を感じる一方で、冒険に立ち向かうときのようなワクワクする気持ちもわいてくる絵本です。この絵本からつくられた映画をご覧になった方もいらっしゃるのでは。とてもうらやましく思います。(店主)

ジュマンジ
C. V. オールズバーグ
村上春樹 訳

あすなろ書房
2019年12月20日発行
本体1500円+税

2020年3月6日金曜日

【本の紹介】その手がおぼえてる



 母と子の絆を描いた絵本です。二人が遠く離れていても、一緒に過ごした記憶があれば、絆は消えることはありません。
 子どもはいつか母親の手を離れ、独り立ちしていきます。頭の中に残った記憶の多くは忘れ去られていくものです。
 でも、記憶が残るのは頭の中だけではありません。それは手にも残り、母と子は手を取り合うことでお互いの記憶を再確認することができます。だから絆はいつまでも消えることはなく、二人を安心させることができるのです。
 この絵本は血のつながりのある母と子を描いています。ただ、翻訳した落合恵子さんは最後のページに、血縁でなくとも、一緒に時間や記憶を重ねることで、一人の子どもと一人の大人を結びつけることがあると信じると書いています。大切に思う人がいるすべて人に、この絵本を贈りたいと思います。(店主)

その手がおぼえている
文/トニー・ジョンストン
絵/エイミー・ベイツ
訳/落合恵子

BL出版
2019年2月1日発行
本体1500円+税

2020年3月4日水曜日

【本の紹介】ぼくは 生まれたとき



 まっくらなママのおなかの中から、「ぼく」は生まれてきました。ぼくは生まれたとき、何も知らなかったのです。
 海も森も山も、砂浜も知りませんでした。鳥や動物がいることも知りませんでした。生まれたばかりのぼくには何もかもが新しく、すべてそこから始まりまったのです。
 ぼくが目を開けると、世界はいろいろな色で溢れていました。口は、叫んだり笑ったり、名前を読んだりキスをしたり、食べ物を味わうこともできます。鼻はいいにおいを吸い込み、耳で心地よい音を楽しむことができます。ぼくは毎日、新しいものを発見しています。それはとても素敵なことです。
 生きていることはとても素敵なことなんだと教えてくれる絵本です。子どもと一緒に読んで確かめてみてください。誰もがこの絵本の「ぼく」だったことを。(店主)

ぼくは 生まれたとき
作 イザベウ ミンニュス マルチンス
絵 マデレナ マトーソ
訳 本田亮

ニジノ絵本屋
2019年7月7日発行
本体1900円+税

2020年3月1日日曜日

【本の紹介】ふみきりくん



 電車の線路を渡るとき、みんな踏切を通ります。電車が通っているときは、踏切は遮断機を降ろしてストップをかけます。踏切は人や自動車を守る大切な役割を担っているのです。
 この絵本のふみきりくんも朝早くから夜遅くまで、踏切の仕事を頑張ってやっています。電車が来ると赤い目玉をピカピカさせながら、「かん、かん、かん、かん!」と大きな音を出して注意を呼びかけます。そんなふみきりくんは、とてもカッコいいと思います。
 今、鉄道の線路は高架になるところが増えてきています。踏切をつくらなければいけない場所は減ってきました。これから踏切を見る機会は確実に減っていくでしょう。踏切は電車が通り過ぎるまで待たなければならず、ちょっとやっかいな存在と思われていました。でも、なくなってしまうのは、ちょっと寂しいですね。
 実は、ふみきりくんにはモデルがいます。千葉県船橋市の京成線海神駅近くの踏切です。だから、この絵本には京成線の電車が描かれています。特急スカイライナーも登場しています。(店主)

ふみきりくん
えのもとえつこ 文
鎌田歩 絵

福音館書店
2019年10月5日発行
本体900円+税

【本の紹介】チョッキリ 草木を切って子育てをする虫(たくさんのふしぎ2024年5月号)

   この虫のことは、ほとんど知りませんでした。「チョッキリ」とは、体長1cmほどのちいさな甲虫です。長く伸びた口が特徴のゾウムシの仲間だそうで、同様に長い口を持っています。  名前の由来が愉快です。「ドングリに穴をあけて卵を産みこみ、最後にチョキっと枝を切り落とす」から「チョッ...