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絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2023年6月30日金曜日

【本の紹介】シポックさいごのえもの




 怪鳥シポックと大蛇オデカの戦いの火蓋が切られました。食うか食われるか、熾烈な争いのすべてを描いた絵本です。でも結末に残された一つの疑問。それは解けないままなのか!

 シポックは世界中を飛び回り、けだもの、さかな、とりやむしのしっぽというしっぽを全部食い尽くしました。残されたのは、おんまけやまに住むオデカのしっぽのみ。

 シポックとオデカは三日三晩戦いました。オデカが降参し、シポックは勝つには勝ったのですが、困った事態が起こります。オデカのしっぽがどこから始まるのか分からないのです。

 悩みに悩むシポック。そして、最後に悲劇が訪れます。シポックには気の毒でしたが、圧倒的な迫力の絵と、とぼけた会話の対比が愉快です。(店主)


シポックさいごのえもの

さく いとうひろし


めくるむ

2023年4月発行

価格本体1,700円+税

【本の紹介】沈没船はタイムカプセル(たくさんのふしぎ2023年7月号)




 世界には300万隻もの沈没船が存在しているそうです。海に沈んだ沈没船を調べると、私たちの歴史をうかがい知ることができます。

 例えば、長崎県・鷹島の海では元寇の沈没船が2隻も発見され、今も調査が続いています。元寇は日本の鎌倉時代の一大事件です。当時のモンゴル帝国の船団が2回、日本を攻め込みました。2回目のときは台風が日本を救ったといわれています。台風によって多くのモンゴルの船が海に沈みました。その沈没船がまだ残り、私たちにいろいろなことを教えてくれるのです。

 海中などに残された遺跡を「水中遺跡」といいます。沈没船は水中遺跡の代表的な存在です。水中で砂に埋もれた沈没船は真空パックのように酸素から遮断された状態になります。そのため、木材などの保存状況はとてもよくなり、沈んだ当時に近い姿を私たちに見せてくれます。沈没船は、まさにタイムカプセルです。

 水中遺跡を調べる学問を「水中考古学」といいます。実は、水中考古学の研究者自身が水中遺跡を発見することはほとんどないそうです。漁師やダイバーなど、日ごろから海に関わる人から得た情報を貴重な発見につなげています。だから水中考古学者は、できるだけの多くの人々に水中遺跡にの存在を知ってもらいたいと考えているそうです。この絵本もそうした願いから生まれました。(店主)


沈没船はタイムカプセル(たくさんのふしぎ2023年7月号)

佐々木ランディ 文

矢野恵司 絵


福音館書店

2023年7月1日発行

定価770円(本体700円+税10%)


2023年6月27日火曜日

【本の紹介】ジッタとゼンスケ ふたりたび(こどものとも2023年7月号)




 江戸時代を想定した時代劇の絵本です。登場するのは動物たち。江戸っ子のおおかみの兄弟が大活躍します。

 おにいさんはジッタ。おとうとはゼンスケ。2匹は旅の途中です。大仏さまを拝むため、都にやって来たところです。

 お茶屋さんで休んでいると、氷屋のやまざる一家が助けを求めて駆け込んで来ました。きんぎつねのお殿様に氷を届けなければならないのに、子どもが熱を出してしまったのです。「おれたちが いくよ!」と立ち上がったのはジッタとゼンスケ。「どうってことねえよ!」「あさめしまえよ!」と威勢よく引き受けます。江戸っ子だねえ!

 テンポよくお話が進みます。次から次へと立ちはだかる難関。助けを求められると放っておけないジッタとゼンスケにハラハラしどうしです。(店主)


ジッタとゼンスケ(こどものとも2023年7月号)

くらささら 文

くりはらたかし 絵


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

2023年6月24日土曜日

【本の紹介】ハイウェイ パトロール(かがくのとも2023年7月号)




 ハイウェイパトロールの仕事を丁寧に紹介する絵本です。ハイウェイパトロールの仕事は高速道路の安全を守ること。いつもどんな仕事をしているのでしょう。

 高速道路では自動車がとても早く走っています。横断歩道も踏切も無く、自動車はほとんど止まることなく走り続けます。自動車が安心して走れるように、高速道路は常に安全でなければいけません。

 高速道路を走っているとき、ときどき見かける黄色いくるま。あれが高速道路の見守りをするハイウェイパトロールカーです。事故を引き起こしかねない落とし物を見つけたら、すぐに取り除く作業を始めます。高速道路上の作業はとても危険です。ハイウェイパトロールカーには危険を防ぐための特別な装置があり、またハイウェイパトロールの隊員は身を守るための訓練も欠かせません。

 おや、高速道路の管制センターから事故発生の緊急連絡が発せられました。ハイウェイパトロールの大活躍が始まります。(店主)


ハイウェイ パトロール(かがくのとも2023年7月号)

小輪瀬護安 さく


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

2023年6月23日金曜日

【本の紹介】どっとこ むしずかん(こどものとも年中向き2023年7月号)




 虫の図鑑です。ちょっと変わった図鑑です。虫を「ドット絵」で描きました。

 ドット絵とは、少し前の時代のコンピュータグラフィックスのイメージ。ドットとはデジタルデータの画像を構成する最小単位であり、そのドットによって描かれた絵がドット絵です。

 コンピュータによる画像を数少ないドットで構成するしかなかった時代、デジタル画像の描写はとても粗いものでした。でも、みている人はそれを想像力で補い、頭の中で自由に綿密な絵を描いていたのです。この絵本のドット絵も、あえて限られたドットで虫たちを描き、私たちの想像力を掻き立てます。

 一つひとつのドット絵が何の虫か分かりますか? 分かったときの何ともいえない快感。ぜひみなさんも味わってください。(店主)


どっとこ むしずかん(こどものとも年中向き2023年7月号)

中村至男 さく


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

2023年6月22日木曜日

【本の紹介】すいかを どうぞ!(ちいさなかがくのとも2023年7月号)




 動物たちが一個丸のままのすいかを食べるシーンを描いた絵本です。それぞれ個性的なやり方ですいかを食べています。

 最初に登場するカバは、豪快にすいかを丸呑みします。お口の中で「バグ バグ」。何も残さず、綺麗に平げます。すごいなあ。

 アライグマは口で皮に穴を開けて、そこから前足を突っ込んで果肉をつかみ出して食べています。前足の指が長く、器用に物をつかむことができるそうです。中身を食べ尽くされたスイカは、そのままの形で皮だけ残されました。

 森林地帯で暮らすサルのブタオザルは賢く知恵を働かせます。スイカを高いところから落とし、割って食べるのです。さて人間は? もちろん包丁を使って「ザクッ ザクッ」と切り分けてから食べます。夏が来てスイカを食べるのが待ち遠しくなりました。(店主)


すいかを どうぞ!(ちいさなかがくのとも2023年7月号)

笠野裕一 さく


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

【本の紹介】あっちむいて ほい(こどものとも年少版2023年7月号)




 魚も「あっちむいてほい」で遊ぶ⁉︎ ホントかな?

 表紙の写真は2匹のギンガハゼが「あっちむいてほい」でそっぽを向き合ったところ。裏表紙をみると、2匹並んでこっちを向いています。

 魚たちのユニークでユーモラスな姿が微笑ましい写真絵本です。どの写真も海の中、ほぼ1メートル以内の至近距離で撮影しました。色鮮やかでインパクトのある形。魚たちが生き生きと躍動しています。

 命の輝きが表現されている写真です。こんなにも美しい命を育む地球を大切にしたいと思います。(店主)


あっちむいて ほい(こどものとも年少版2023年7月号)

中村征夫 さく


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

【本の紹介】のびのーび のびのーび(こどものとも0.1.2. 2023年7月号)




 動物たちを柔らかいタッチで描いた絵本です。撫でたときのふわふわの感触が容易に想像できるようです。

 動物たちが自然に伸びの動作をしています。伸びをするのはとても気持ちがよい。体も心もシャキッとします。

 伸びは行動開始の合図になるのでしょうか。直後はちょっと緊張感も漂い、よい表情を見せてくれます。そんな動物たちの一瞬の姿を捉えました。

 色鉛筆を使った丁寧な描写が見事です。動物たちの真似をして伸びをするのも楽しそうです。(店主)


のびのーび のびのーび(こどものとも0.1.2. 2023年7月号)

さみぞみちこ さく


福音館書店

2023年7月1日発行

定価440円(本体400円+税)

2023年6月18日日曜日

【本の紹介】さわってもいい?




 いとこのお家に遊びに来た「たっくん」。いとこのおねえちゃんの「ゆうちゃん」と「えっちゃん」は、たっくんのマシュマロみたいなほっぺを触りたがります。

 えっちゃんの触り方がだんだんエスカレートしてくると、たっくんはほっぺが痛くなってきました。たっくんが嫌な気持ちになっていることにえっちゃんは全然気がつかないみたい。たっくんの体と心はカチカチに固まってしまいました。

 でも、ゆうちゃんの一言をきっかけに、たっくんはえっちゃんに自分の気持ちを伝えることができました。たっくんから「えっちゃん、いたいからやめて」といわれ、えっちゃんはたっくんが嫌がっていたことに気づきます。大切なことは、自分の気持ちを相手にきちんと伝えること、そして相手の気持ちを思いやることです。

 思いやりの心が通じれば、きっと笑顔が広がります。この絵本の最後の場面のように…。(店主)


さわってもいい?

はまのゆか


めくるむ

2023年1月発刊あ

価格本体1,800円+税

2023年6月15日木曜日

【本の紹介】ばけばけバス




 きつねとたぬきのコンビが主人公の絵本です。両方とも化けるのが大の得意。いったい何に化けるのでしょう。

 青空の下、きつねがのんびりしています。そこにたぬきがやってきて、友だちの動物たちがかくれんぼに入れてくれないと泣いています。たぬきは何かに化けてずるをするといわれたのです。たぬきは鼻をすすりながら「みんなと なかよく したいのに」といいました。

 そこで、きつねはたぬきに、バスに化けることを提案します。運転手はきつねです。おにぎりやまのてっぺんでは今、しだれざくらが満開。おはなみバスを走らせて、みんなに喜んでもらおうというアイデアです。

 おはなみバスは大人気。大勢の動物たちを乗せて山道を進みます。でもこのバスは、本当はたぬきです。たぬきは無事、おやまのてっぺんに着けるのでしょうか。柔らかいタッチの絵から、動物たちの優しい心が伝わります。(店主)


ばけばけバス

タカタカオリ


ひだまり舎

2023年4月10日発行

定価1600円(税別)

2023年6月14日水曜日

【本の紹介】ユキエとくま




 日本の北海道にはアイヌと呼ばれる先住民族がいます。この絵本は、一人のアイヌの人生をファンタジックな物語として描きます。

 主人公の名前はユキエ。ユキエは小学校に上がる少し前の日から、おとうさんやおかあさんと離れ、フチ(「おばあさん」を意味するアイヌ語)の家で暮らし始めます。

 フチはアイヌの人々が言い伝えてきた物語をアイヌ語でうたいます。ユキエが17歳のとき、東京から口ひげの生えた男の人がやってきて、フチの歌声を文字として書き留めたいので手伝ってほしいと頼みます。アイヌ語には文字がないのに、その言葉を文字にうつしとることなどできるのでしょうか。

 ユキエのモデルになった知里幸恵(ちりゆきえ)は、アイヌ文化を今に伝える「アイヌ神謡集」を編纂しました。祖母が語るアイヌの物語を、アイヌ語の持つ音楽性を損なうことなく、見事な日本語に置き換えたと高く評価されています。口ひげの男のモデルは、著名な言語学者の金田一京助です。くまはアイヌ民族の精神的シンボルであり、この絵本のお話でも要所要所に登場します。

 この絵本は、イタリアの児童文学作家とイタリア在住の日本人画家による作品です。イタリアと日本をアイヌ文化でつなぐものとして、イタリア本国でも注目を集めたそうです。(店主)


ユキエとくま

アリーチェ・ケッレル 文

はせがわまき 絵

関口英子 訳


工学図書(山烋のえほん)

2023年6月8日発行

定価(本体1,800円+税)

2023年6月13日火曜日

【本の紹介】すてきなテーブル




 バラバラになってしまった家族の繋がりを、子どもが再び取り戻します。人と人の繋がりの大切さを描いた絵本です。

 子どもの名前はヴァイオレット。かつて家族みんなが集ったテーブルで、今はただ一人過ごすことが多くなりました。そのせいでしょうか。世界は紫一色になってしまいました。

 家族はみんな忙しくなり、一人ひとり別の居場所ができたのです。やがてある日、思い出のテーブルに変化が訪れます。だんだん小さくなり、最後には消えて無くなってしまいます。そこでヴァイオレットが講じた一策とは…。

 家族が集まり、語り合えば、世界は再び多彩な色に変わります。そこにあるのは「すてきなテーブル」。きっとみんなの家にもありますよ! (店主)


すてきなテーブル

ピーター・レイノルズ 絵と文

島津やよい 訳


新評論

2021年11月11日発行

定価(本体1600円+税)

2023年6月2日金曜日

【本の紹介】ちきゅうがわれた!




 昼寝をしていた緑色のわには、聞いたこともない大きな音にびっくりしました。それは地球がわれた音でした。

 地球がわれたとあっては、さあ大変。わには大騒ぎで、動物たちみんなに「にげないと!」と呼び掛けます。

 おさるさんやうし、とり、へびもぞうも、みんなが走り出します。地平線まで見渡す限りの命が走ります。谷をぬけて、川をわたり、森をこえて、みんな急げ急げ!

 地球の生き物のエネルギーを感じさせる絵本です。最後は拍子抜けするような結末が待っていて、みんな一安心。でも、本当に安心してしまっていいの? 作者が読者に呼びかける声が聞こえてきそうです。(店主)


ちきゅうがわれた!

田島征三 え

国広和毅 ぶん


ひだまり舎

2019年4月1日発行

定価1600円(税別)

【本の紹介】チョッキリ 草木を切って子育てをする虫(たくさんのふしぎ2024年5月号)

   この虫のことは、ほとんど知りませんでした。「チョッキリ」とは、体長1cmほどのちいさな甲虫です。長く伸びた口が特徴のゾウムシの仲間だそうで、同様に長い口を持っています。  名前の由来が愉快です。「ドングリに穴をあけて卵を産みこみ、最後にチョキっと枝を切り落とす」から「チョッ...