昔、よく働く人がいました。彼は自分の魂を、どこか遠くに置き忘れてしまいました。魂が無くても普通に暮らすことはできたのです。
あるとき、旅行に出かけた彼は、ホテルの部屋で自分自身を失います。そして翌日、賢い老医師を訪ね、自分の魂が迷子になっていることを知ります。
彼は街のはずれに小さなコテージを見つけ、そこで自分の魂を待つことにしました。毎日そこに腰掛け、待つこと以外に何もしませんでした。幾年も過ぎ、彼の髪は長く伸び、顎髭は腰に届くほどになりました。
時間の流れとともに、静かな絵が重なっていきます。やがて迷子の魂は彼を探し当てました。彼の存在は、時間に追われる日々を当然のことのように受け入れるようになった私たちと重なります。これはそんな私たちが、自分自身を取り戻すための絵本です。(店主)
迷子の魂
オルガ・トカルチュク 文
ヨアンナ・コンセホ 絵
小椋彩 訳
岩波書店
2020年11月5日発行
定価(本体2500円+税)
0 件のコメント:
コメントを投稿