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2018年4月27日金曜日

【本の紹介】石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを




 絵本や児童文学の世界に大きな足跡を残した石井桃子の伝記です。自分の信念にしっかりと向き合い、自己実現の努力を怠らなかったエネルギッシュな生き方に、多くの子どもたちがよい刺激を受けると思います。子ども向けに書かれていますが、その生涯は日本における子どもの本の歴史そのものと重なり、絵本などに関心を持つ大人たちも興味深く読むことができるでしょう。
 石井桃子は数多くの絵本・児童書を翻訳して日本に紹介しました。「ピーターラビットのおはなし」や「クマのプーさん」「ちいさいおうち」など、誰もが知っている作品がめじろおしです。翻訳だけにとどまらず、作家として「ノンちゃん雲に乗る」など自らの作品を残し、また編集者としてもたくさんの本が世に出ることを後押ししました。その仕事の幅広さに驚嘆するほかはありません。
 「クマのプーさん」をめぐるエピソードが紹介されています。石井桃子は、当時首相を務めた犬養毅の家で書庫整理の仕事を任されました。その後、犬養首相暗殺という悲劇が起こりますが、犬養家とは家族ぐるみの付き合いが続き、クリスマス・イブに招かれた際に、子どもたちへのプレゼント用にイギリスから届いた1冊の英語の本に出会います。その本は「クマのプーさん」の続編の「プー横丁にたった家」でした。英語が得意な桃子がその場で日本語に直して子どもたちに読んであげると、とても喜ばれました。これをきっかけに、桃子はプーさんの本の翻訳を始め、出版までこぎつけました。
 石井桃子はその長い人生で、牧場を経営したり海外留学をしたり、さまざまなことを経験しました。桃子が始めた家庭文庫の輪は全国に広がりました。また、日本で初めての子どもの本の専門図書館となる東京こども図書館の設立にも尽力しました。心の中心にいつも子どもの本があり、子どもたちが自由に本を楽しめることに生涯をかけて取り組みました。桃子は2008年、101歳でその生涯を終えました。私たちはいつまでも、桃子を忘れることはないと思います。(店主)

石井桃子 子どもたちに本を読む喜びを
竹内美紀 文

あかね書房
本体1500円+税
2018年4月5日発行

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