赤黒い水をたたえ、ソロという木がうっそうと茂る沼。いつのころからか「ソロ沼」と呼ばれるようになった沼が、この物語の舞台です。ソロの木とはアカシデのことを指すようです。
巨大なソロの木には大きな穴があり、鹿や猪が吸い込まれてしまうとか。大木のソロの木は「ソロ沼御前」と呼ばれ、沼の守り神として祀られています。
また、かつて沼に暮らしたたくさんの大きなカエルたちは沼の生き物をありったけ食べ、自分たちの子まで食いつくしてしまいます。でも、1匹のカエルが生き残り、心をあらためて、やはり沼の守り神になったと言い伝えられています。
神秘的な伝説を残すソロ沼に暮らす小さな生き物たちのエピソードを集めた短編集です。ミズスマシ、トノサマバッタ、ジャコウアゲハなどの虫たちや、カスミアマツバメやアカガエルが擬人化され、生と死をかけた弱肉強食の世界をファンタジーのように描きます。そこから浮かび上がるものは、生命の輝きに他ならないと思われます。(店主)
ソロ沼のものがたり
舘野鴻=作
岩波書店
2022年5月26日発行
定価(本体2000円+税)
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