富士山の景観を形作るからまつの生態を描きます。その姿はたくましく、私たちに勇気を与えます。
雪崩の後の荒地に芽を出すからまつ。芽生えたからまつが地面に根を張らせることは難しく、その多くは枯れてしまいます。でも、生き残ったからまつは何年もかけて背を伸ばし、やがて森を造り、その森に多くの生き物が住むようになります。この絵本の文章を書かれたのは菅原久夫さん。からまつと富士山に向けた、たっぷりの愛情を感じます。
菅原さんが付録の「作者のことば」でからまつについて解説しています。その解説で初めて知ることがありました。常緑ばかりと思っていた針葉樹で、からまつだけは葉が黄色くなり落葉すること。からまつが生えることができるのは陽の光が降り注ぐ荒れ地だけで、からまつは荒れ地に森を造る木の代表格であること。
この絵本は端正な文章にダイナミックな絵が組み合わさったことで、その魅力が増したように思います。絵を担当された福井利佐さんは、付録のプロフィール欄で「切り絵アーティスト」と紹介されています。とすると、この絵本は切り絵の手法で描かれた絵で作られたのでしょうか。精密な描写と迫力ある構成、単純ながらリアリティを感じさせる色使いが見事です。(作者)
からまつ(かがくのとも2022年11月号)
菅原久夫 ぶん
福井利佐 え
福音館書店
2022年11月1日発行
定価440円(本体400円+税10%)
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