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2017年11月10日金曜日

今月のYAの会は「紙の動物園」



 千葉市の児童書専門店の会留府で毎月開かれている「YA(ヤングアダルト)の本を読む会」で11月9日、「紙の動物園」(ケン・リュウ、吉沢嘉通編・訳、早川書房、ハヤカワ文庫SF)を読みました。作者であるケン・リュウの作品を読むのは今回が初めてです。鋭利な文章が心地よく胸に刺さります。この作家にはこれからも注目していきたいと思いました。
 7つの短編作品を集めた短篇集です。強く印象に残った作品は表題にもなった「紙の動物園」でした。主人公の「ぼく」はアメリカの少年です。母親は中国人です。父親はカタログをみて母親を選びました。二人は香港で会い、父親が母親をアメリカに呼び寄せ、1年後にぼくが生まれました。ぼくが泣くと母親は包装紙で折り紙の虎をつくってくれました。風船のように息を吹き込むと、虎は動くようになります。ぼくの願いに応じて母親は山羊と鹿と水牛もつくってくれました。ぼくは成長し、アメリカの生活に馴染めないまま母親は亡くなります。でも、紙でつくられた虎を通じて、二人は強く結ばれていたことが分かります。
 ケン・リュウは世界的に注目を集める新鋭のSF作家の一人、とのことです。1976年に中華人民共和国で生まれ、11歳のときに家族とアメリカ合衆国に移住。ハーヴァード大学で英文学を専攻しながらコンピュータ・サイエンスの授業も取り、卒業後はマイクロソフト社に入社しています。ただ、すぐに独立してソフト・ウェアの開発を手がけ、さらにハーヴァード・ロースクールで学び、弁護士や特許訴訟関係のコンサルタントとしてのキャリアを重ねました。その一方で作家活動も始めたということで、かなり多才な人です。ケン・リュウの作品の背景には中国や日本を含めた東アジアの歴史が反映されていることも興味深く思いました。
 この文庫本には「ケン・リュウ短篇傑作集1」というサブタイトルが付いています。続編の「ケン・リュウ短篇傑作集2」も、「もののあはれ」というタイトルで発刊されています。この2冊の文庫本の親本は「紙の動物園」というタイトルの単行本であり、15編の短編作品を集めた短編集です。編・訳者によると、文庫化に際して収録順を多少入れ替え、1巻目はファンタジィ篇、2巻目はSF篇といえるような構成にしたということです。(店主)

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