誰もが「おもいで」という風船を持っているようです。風船には一つずつ、その人の思い出が詰まっています。年を取れば取るほど、風船の数は多くなります。この絵本に出てくるおじいちゃんも、風船をたくさん持っていました。
その中の銀色の風船は、孫の「ぼく」にとって特別です。なぜなら、ぼくも同じ色の風船を持っているから。銀色の風船には、おじいちゃんとぼくの共通の思い出が詰まっているのです。でも、風船はだんだんおじいちゃんから離れていき、ついに銀色の風船まで飛んでいってしまいました。それとともに、おじいちゃんから思い出が消えていくのです。ぼくは叫びました。「なんで とばしちゃうの!」
おじいちゃんの風船が全部無くなりました。ところが、いつのまにか、ぼくの風船は増えていました。ママがいいました。「おじいちゃんの おもいでのふうせんは すべて あなたのものよ」。ぼくは、ぼくのものになった風船の話を、おじいちゃんにしてあげるのでした。
認知症になったおじいちゃんをやさしく描いた絵本です。今、この絵本を手元に置きたいと思う人は、決して少なくないはずです。(店主)
とんでいったふうせんは
ジェシー・オリベロス 文
ダナ・ウエルコッテ 絵
落合恵子 訳
絵本塾出版
2019年9月発行
本体1500円+税
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