ブログの説明

絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2018年2月28日水曜日

【本の紹介】生きる




 谷川俊太郎さんの「生きる」という詩が絵本になりました。詩をどう解釈するか言葉で表すことはとても難しく、そもそもその必要もないと思いますが、巻末の作者自身による「〈いま〉の意識」という文章は、とても分かりやすく一つの道筋を示しているように思います。
 作者はこの詩について、「私たちの心を束の間立ち止まらせて、さまざまな〈いま〉の情景から、ふだんはことさら意識することのない視点で、人生を俯瞰して見直させる働きがあるのかもしれません」と書いています。一瞬に過ぎない〈いま〉の情景が、長い人生を見つめ直すことにつながる。まさにその通りだから、この詩は人々の心に響き、愛されているのだと思います。
 絵も、ことさら意識することのない視点で、ある家族の夏の一日を描いています。姉と弟、その父母の4人家族です。この日は別に暮らす祖父の誕生日でした。祖父は家族の家にやってきて、お誕生会を楽しみます。冒頭に描かれたセミを通じて、生きること、そして生命の重さが伝わってきます。
 この詩は「いま生きているということ」という歌になっています。フォークシンガーの小室等さんが曲をつけて自ら歌っています。(店主)

生きる
谷川俊太郎 詩
岡本よしろう 絵

福音館書店
本体1300円+税
2017年3月5日発行

2018年2月25日日曜日

【本の紹介】おとうさんとあいうえお




 短いお話が12個集まった童話集です。主人公のとしちゃんがおとうさんから、「あいうえお」の字を少しずつ教えてもらうお話です。ときどきおかあさんも登場します。ほのぼのとした楽しい会話が、どこからか聞こえてくるような気がします。
 早起きのおとうさんととしちゃんは犬の散歩に出かけます。少し歩いて海の見える砂浜に着きました。ちょっと一休み。それから、おとうさんは「きょうから としちゃんに、じを おしえてあげよう」といいました。としちゃんは、手を叩いて喜びます。
 あいうえおの一つひとつの文字を、散歩や買い物ごっこ、なぞなぞ遊びをしながら覚えます。お友だちや体の名前を使って覚えたりもします。シンプルでかわいいイラストが目を楽しませてくれます。
 作者の東君平は1986年、46歳の若さで逝去し、没後30年を迎えました。この作品は1990年に童心社から「おとうさんのあいうえお」というタイトルの絵本として出版されていました。判型、レイアウトなどを見直し、今回あらためて発刊されました。古さをまったく感じさせず、読む楽しみにあふれています。(店主)

おとうさんとあいうえお
東君平 さく・え

廣済堂あかつき
本体1300円+税
2018年1月31日発行

2018年2月24日土曜日

【本の紹介】ゆきのあかちゃん




 雪は、最後にはとけてなくなってしまうのでしょうか。出会った人とも、もう会えない? いえいえ、そうではありません。姿形が変わるだけ。この絵本が教えてくれます。生まれたばかりのゆきのあかちゃんのお話を聞いてみましょう。
 くものおかあさんから、ゆきのあかちゃんが生まれました。冷たくて真っ白な洋服を着ています。風に飛ばされて街までやってきました。おかあさんとよく似たやさしい目の女の子と出会います。女の子の手のひらめがけて思いっきりジャンプしました。ゆきのあかちゃんは手のひらで、ひとしずくの水になってしまいました。
 水になったゆきのあかちゃんは、昔この街に来たことを思い出しました。そのときも雪でした。水になった雪はまた雪になり、何度も生まれてくるのです。ゆきのあかちゃんは女の子にこういいました。「なんどでも きっと また…あおうね」。
 色彩が美しい絵本です。白いゆきのあかちゃんの心情に合わせて背景の色彩が変化し、物語を劇的に表現しています。絵は主にパステルで描いたそうです。色のやわらかさと繊細な描き方がバランスよく調和し、絵にあたたかさと深みを与えていると思います。(店主)

ゆきのあかちゃん
宮田ともみ

アリス館
本体1400円+税
2017年10月31日発行

2018年2月23日金曜日

【本の紹介】へそとりごろべえ




 表紙にはりりしい姿の鬼がいます。雲に乗った雷さまです。おへそが大好きなへそとりごろべえです。ハンドルが付いた雲は、どこにでもビュンビュン飛んで行けそうです。ばちを持った太鼓は、自分でゴロゴロさせることができるようです。ハイテクな雷雲です。
 ごろべえは次から次へとおへそを取っていきます。その相手はたぬきにねずみ、そしてライオン! さらに桃太郎や鬼ヶ島の鬼、そのほかびっくりする相手が登場します。
 絵本の見開きページの効果的な使い方はさすがです。1ページごとにお話をテンポよく進めたり、広く2ページ分を使って迫力満点の絵にしたり、読み手をぐいぐい引き込む構成です。
 見て楽しい、そして読んで楽しい絵本です。作者の遊び心に満ち溢れています。最後のページのとぼけた終わり方にはびっくり。この絵本は1978年に刊行され、出版社の創立60周年記念として、ほぼそのままの形で復刊されました。復刊した出版社に深く感謝します。(店主)

へそとりごろべえ
赤羽末吉

童心社
本体1400円+税
2017年12月7日改訂新版発行

2018年2月22日木曜日

ビブリオパドルに行きました!




 ビブリオパドルに行きました。東京都国分寺市の絵本・児童書専門店の「おばあさんの知恵袋」で絵本好きがそれぞれのお気に入りを紹介しあいます。
 今回は21日の開催。テーマは「ねこ・猫、スイーツ」。参加者は7人でした。
 私は「こねこのジェーン ダンスだいすき!」(きじとら出版)を紹介しました。子ねこのジェーンが主人公です。ジェーンはバレリーナになることを夢見ています。バレエスクールに入ったジェーンはバレエの練習に夢中になるあまり友だちと仲違い。でも、すぐに仲直りして一緒にダンスパーティを楽しみます。自分の気持ちを正直に表現するジェーンが素敵です。
 そのほか今回取り上げられた絵本は、「ねこじたなのにお茶がすき」(淡交社)、「てつがくのライオン」(復刊ドットコム)、「くろねころびんちゃん ごろごろ」(キーステージ21)、「和菓子のほん」(福音館書店)、「ゆめねこ」(金の星社)、「サイモンは、ねこである」(あすなろ書房)、「ねこガム(こどものとも年少版2005年1月号)」(福音館書店、品切)、「ねえ どっちがすき?(こどものとも年少版1998年9月号)」(福音館書店、品切。この作品は書籍化されて入手可能)などでした。今回も個性的な絵本がそろいました。(店主)

2018年2月21日水曜日

「母の友」2018年3月号が入荷済みです!




 「母の友」2018年3月号の特集のテーマは「今、保育を考える」です。ブレディみかこさんがとても刺激的で興味深い記事を寄稿されています。ブレディさんはイギリス在住のライター・コラムニストで、イギリスで保育士の資格を取り、実際に働いていた経験もあります。保育士の立場から社会や政治の問題を捉えた著書があり、今号では「保育士がなぜ政治を語るのか」というタイトルで原稿を執筆されました。
 ブレディさんが政治について書こうと思ったきっかけは、保育士資格取得コースで毎学期の終わりに書かされたミニ論文だったそうです。ミニ論文では保育士の日々の仕事と、それを行う理由としての法的フレームワークや学術的根拠をセットにして論じることが求められました。その際、法的フレームワークとなる法律集の該当箇所を示すだけでは合格点に達せず、その法律が基づくEUまたは国連の法律や条約、さらにその法律制定時の時代背景や社会問題まで言及する必要があったそうです。
 ブレディさんはそこまで求められることにとても驚かされましたが、ミニ論文をこなしているうちに、保育現場の事柄から、その背景がみえるようになってくることに気づきます。泣いている子どもの背後に同じような状況に置かれて泣いている子どもたちがいて、その後ろに唇を噛んでいる親たちの姿が見える。親たちの背景には政治があり、彼らを苦しめている根源として制度上の欠陥や法の不条理、そしてそれを放置する政治があると考えるようになったそうです。社会福祉士で社会運動家でもある藤田孝典さんは、これを「ミクロとマクロの連動性」と呼んでいるそうです。
 ブレディさんは、日本では「ミクロとマクロの連動性」を持った人を養成する気運がないことに危機感を示します。「本来ならばミクロな現場で問題を皮膚で知っている人々が、制度の欠陥や法の不完全性について考える回路を持たなくなる」といい、「これは国を運営している側にとってはやり易い」と指摘する一方で、「現在あるもの」が徐々に劣化して社会全体が衰退してしまうと警告します。ブレディさんは、現在あるもの自体を疑う人々のことを「面倒くさい人」と表現します。そして、もっと面倒くさい人を増やすため何ができるだろうと考えているそうです。私も、どうしたら面倒くさい人の一人になれるか考えてみたいと思います。(店主)

2018年2月18日日曜日

【本の紹介】ちいさなちいさなこおりのくに




 不思議なキャラクターの「ポコポコ」が活躍する絵本シリーズの最新作です。ポコポコは丸くて小さくてふわふわ。正体不明だけど、とても可愛らしい人気者です。
 ある日、雪が降ってポコポコは大喜び。でも、暖かい日だったのにどうして雪が降ったのでしょう。空を見上げると、銀色の氷の雲からしんしんと雪が降っています。ポコポコは風に流される氷の雲を追いかけてみることにしました。ポコポコの小さな冒険の旅が始まります。
 氷の雲を追いかけているうちに、ポコポコはいろいろなおうちを見つけて楽しいひとときを過ごします。カップケーキのおうちではプードルさんが雪だるまを作っていました。ポコポコも一緒に雪だるまを作り始めました。最後にたどり着いたのは「こおりのくに」。そこには氷の雲の帰りを心待ちにしていた銀色のきつねたちがいました。
 この絵本シリーズは7冊を数えるまでになりました。可愛い絵が子どもたちの心を引きつけるだけでなく、断面図のように描いたおうちの中のようすを子どもたちはわくわくしながら見ているのでしょう。「断面図えほんシリーズ」という呼び方もあるそうです。よく工夫されている絵本です。(店主)

ちいさなちいさなこおりのくに
さかいさちえ

教育画劇
本体1000円+税
2017年11月22日発行

2018年2月17日土曜日

【本の紹介】はじまるよ




 熊谷守一の絵で構成した贅沢な絵本です。幼い子どもたちに身近なモチーフの絵を組み合わせ、ゆるやかに時間が流れる一日を表現しました。
 「おひさま、おはよう」と朝が始まります。空には雲が浮かび、木立の間を風が通ります。次々と生き物が登場します。画家が愛した猫は幸せそうに眠るだけ。最後は夜になり、「ぐっすりおやすみ」とページを閉じましょう。
 詩人のぱくひょんみさんがやさしくてシンプルな言葉を綴っています。これらの言葉が絵をいっそう生き生きとさせ、深みを増しています。
 熊谷守一ファンとしては、とてもうれしい絵本です。一方で、こういう絵本の作り方もあるのかとびっくりしました。絵本の可能性が、またひとつ広がったように思います。(店主)

はじまるよ
熊谷守一 絵
ぱくきょんみ 文

福音館書店
本体800円+税
2017年11月5日発行

2018年2月16日金曜日

【本の紹介】ひょうたんめん




【本の紹介】ひょうたんめん

 お化けの「ひょうたんめん」と男の人の戦いをスピーディに描きます。男の人は「おとじろうまごじろう」という変わった名前。一人で二人分の名前を使っているようで面白いですね。ひょうたんめんはかなり強くて怖いお化けです。でも、おとじろうまごじろうも負けていません。両者の戦いの結末はどうなるのでしょう。
 舞台は昔の「たねがしま」です。おとじろうまごじろうは馬を引いて塩を買いに行きました。帰りのさびしい山道、ひょうたんめんというお化けが出ると噂されている場所を通ります。馬を急がせますが、ひょうたんめんが登場。塩を食べ、馬を食べ、次はおとじろうまごじろうを追いかけます。
 ひょうたんめんは怖いけど、少し間抜けなところもあるようです。松の木の上に逃げたおとじろうまごじろうの影が小川の水面に映ると、ひょうたんめんはその影をめがけて飛び込み、川底に頭をぶつけてしまいます。機知を働かせたおとじろうまごじろうは、ひょうたんめんから逃げ通すことに成功します。「ひょろり ひょろり」と帰っていくひょたんめん。おとじろうまごじろうの反撃が始まります。
 鹿児島県の種子島に伝わる昔話を神沢利子さんが再話しました。リズミカルな文章で、テンポよくお話が進みます。赤羽末吉のダイナミックな絵がお話の展開をしっかり受け止め、読者を絵本の世界に引き込みます。ひょうたんめんは怖いけどユーモラス。哀愁も感じさせる、とても魅力的なキャラクターです。ひょうたんめんは最後にどうなったのか、とても気になります。本書は1984年発刊の「ひょうたんめん」(偕成社)を新たな装丁・編集で復刊しました。(店主)

ひょうたんめん
文 神沢利子
絵 赤羽末吉

復刊ドットコム
本体1850円+税
2017年11月25日発行

2018年2月15日木曜日

【本の紹介】なきたろう




 主人公は泣いてばかりいる男の子です。本当は「たろう」という名前ですが、泣いてばかりいるから「なきたろう」と呼ばれています。
 生まれてから泣いてばかりのなきたろうは、5つになっても泣いてばかり。泣くから遊んでやらないといわれて泣き、それなら遊んでやるといわれ、うれしくなってまた泣くという具合です。村人たちも、なきたろうの泣き声が大きくて鶏や牛が怯える、しょっぱい涙で稲を枯らすなどといって、ほとほと困ってしまいます。
 なきたろうはとうさんから、山に行って強くなる修行をしろといわれます。山で天狗と出会い、泣き比べで負けた天狗は団扇でなきたろうを扇ぎ飛ばしてしまいます。飛ばされた先でなきたろうは大きく成長します。なきたろうが自分自身のやさしい心で強くなったことに心を打たれます。
 創作民話の絵本です。民話風に作られた大胆なお話の展開に引き込まれます。登場する人物や動物たちを生き生きと描いた絵が、お話の世界に深みと広がりを与えています。本書は1974年発刊の「なきたろう」(文研出版)を新たな装丁・編集で復刊しました。(店主)

なきたろう
作・文 松野正子
絵 赤羽末吉

復刊ドットコム
本体1850円+税
2017年8月24日発行

2018年2月14日水曜日

【本の紹介】もういいかあい? はるですよ(ちいさなかがくのとも2018年3月号)




 公園の紅梅が匂い、道端に小さな花が咲く。春の気配が少しでも感じられると、春がいっそう待ち遠しくなります。
 この絵本に描かれているように、山の木々や草も春を待ち焦がれているのでしょう。でも、春はこっそりとやってきます。
 カエデのこずえで膨らんだ木の芽が「もう いいかあい?」と聞きました。山は最初、「まあだだよお」とつれない返事。雪が解けて「ちょろちょろ さらさら」と谷に向かって流れていくころ、「もう いいよお」と応えます。それから春は一気呵成にやってきます。
 雪景色のとき、山は静かに眠っていたようです。春の訪れとともに目を覚まし、だんだん元気になります。山は新緑の葉とサクラの花で色づきます。お花見にやって来た人たちもいます。さあ、「はるですよ」!(店主)

もういいかあい? はるですよ(ちいさなかがくのとも2018年3月号)
富安陽子 ぶん
松成真理子 え

福音館書店
2018年3月1日発行
本体389円+税

2018年2月11日日曜日

【本の紹介】スプーンのおうじさま(こどものとも年中向き2018年3月号)




 絵もお話も、ほのぼのとした楽しい絵本です。自称「おうじさま」のスプーンは引き出しの中でいつも「つん!」とすましているばかり。なかなかほかのスプーンたちと仲良くなれません。でも本当はみんなとお話したかったみたいです。
 食器棚の引き出しの中はいつもにぎやかでした。たくさんのスプーンたちがはりきって仕事をした後、その日の出来事をおしゃべりするからです。
 ある日、引き出しは一日中閉まったままでした。それから何日か過ぎ、たいくつなスプーンたちはいねむりばかり。「ほぎゃあ! ほぎゃあ!」という声がして目を覚ますと、引き出しが開いて銀のスプーンが入ってきました。冠のついた箱に入り、足元に青いガラス玉がキラキラ光っています。銀のスプーンは「つん!」としていいました。「ぼくはね、スプーンのおうじさまだよ」
 スプーンのおうじさまは、赤ちゃんにスープを飲ませるためのスプーンでした。始めはすましているばかりのおうじさまでしたが、赤ちゃんが初めてスープを飲むときのお手伝いができて、とてもうれしくなりました。それから毎日、おうじさまはほかのスプーンたちと同じように仕事をして、とても仲良しになりました。引き出しの中は以前のようににぎやかです。(店主)

スプーンのおうじさま(こどものとも年中向き2018年3月号)
黒崎美穂 文
鬼頭祈 絵

福音館書店
2018年3月1日発行
本体389円+税

2018年2月10日土曜日

【本の紹介】カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月(たくさんのふしぎ2018年3月号)




 カブトムシの一生を丁寧に描いた絵本です。カブトムシはわずか1年しか生きられません。そして、そのうちの約11カ月を卵や幼虫、蛹の姿で過ごします。その間は土の中の生活になります。地上の世界に出てくるのは成虫になってからです。つまり、カブトムシは一生のほとんどを土の中で過ごすのです。だから、この絵本には、私たちにお馴染みのカブトムシの成虫はあまり出てきません。
 メスのカブトムシがビルに囲まれた都会の公園で卵を産むところから始まります。「都会の公園?」と思った人も多いと思います。「作者のことば」によると、少なくとも関東地方のほとんどの地域で、都会の公園におびただしい数のカブトムシが生活しているそうです。
 さらに驚いたことに、カブトムシは人の暮らしと密接に関わって生活しているため、人里離れた山の中では生活できないそうです。幼虫の餌場となるのは農業のためにつくった腐葉土や、公園や学校で落ち葉などを集めておくところです。人が現れる前にカブトムシがどのような場所に卵を産んでいたのかは、まだよく分かっていないそうです。
 知らないことばかり書かれていて、本当に驚かされました。「カブトムシの音がきこえる」というタイトルについても、最初は何のことなのか分かりませんでした。これは絵本を読むまでのお楽しみ。読み応えたっぷりの絵本です。(店主)

カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月(たくさんのふしぎ2018年3月号)
小島渉 文
廣野研一 絵

福音館書店
2018年3月1日発行
本体667円+税

2018年2月9日金曜日

カズオ・イシグロを読みました!




 千葉市の児童書専門店の会留府で2月8日、「YA(ヤングアダルト)の本を読む会」に参加しました。取り上げたテキストは「わたしを離さないで(ハヤカワepi文庫)」(カズオ・イシグロ、土屋政雄訳、早川書房)でした。今月の司会・進行は私が担当しました。
 いうまでもなく、作者のカズオ・イシグロは昨年のノーベル文学賞受賞者です。受賞前から気になる存在でしたが、作品を読むのは今回が初めて。この作品は長編で読みやすいともいえず、内容の理解も不十分なまま読み終えたように思います。
 SFのような作品といえるかもしれません。主人公たちは人工的に作り出されたクローン人間です。臓器移植で臓器を提供するため生み出された存在です。主人公たちは、自らの存在に対する葛藤もありますが、概ね自分の役割を受け入れているように思います。行き過ぎた生命科学の進歩に対する問題提起が主題の作品ではないでしょう。主人公たちは変えようがない自分の運命と向き合い、極限的な人生を強いられています。一方でこの作品は、主人公たちを一人ひとりの人間として淡々と描き、生命の瑞々しさを表現しています。その文章は端正ながら、味わい深いものだと感じました。
 この機会に同じ作者の「遠い山なみの光」(ハヤカワepi文庫)」(カズオ・イシグロ、小野寺健訳、早川書房)も読んでみました。翻訳者は違いますが、同じように味わい深い文章でした。内容の理解は不十分としても読み応えがあり、また別の作品も読んでみたいと思いました。(店主)

2018年2月8日木曜日

【本の紹介】かもつせんのいちにち(かがくのとも2018年3月号)




 「内航船」という言葉を初めて知りました。この絵本の「作者のことば」によると、外国と日本の港を往来する船を「外航船」と呼ぶのに対し、日本国内の港を結ぶ船を内航船と呼ぶそうです。
 外航船と比べて、内航船は少し華やかさに欠けているように思います。とくに貨物船は、なおさら地味な存在になります。でも、作者はその存在に気づき、この絵本をつくりました。地道に働く貨物船への愛に溢れた絵本です。
 この絵本に出てくる貨物船は、とても大きい。でも動かしているのは、船長を含めたった5人の船員です。とくに夜の航海は危険を伴います。この絵本でも、貨物船は大きなコンテナ船と危うくぶつかりそうになりました。でも、船長のおかげで難を逃れることができました。
 貨物船は鉄の板を巻いたコイルというものを運びます。コイルの鉄の板は自動車や冷蔵庫などの材料になります。船長はコイルが雨や海水で濡れないように気を配ります。貨物船は無事に仕事を終え、また別の港に向けて出発しました。次は何を、どこからどこまで運ぶことになるのでしょう。(店主)

かもつせんのいちにち(かがくのとも2018年3月号)
谷川夏樹 さく

福音館書店
2018年3月1日発行
本体389円+税

2018年2月7日水曜日

【本の紹介】あずきの あんちゃん ずんちゃん きんちゃん(こどものとも2018年3月号)




 3粒のあずきの兄弟の物語です。1番上があんちゃん、2番目がずんちゃん、末っ子がきんちゃんです。3兄弟がお手玉からこぼれ落ちたところから、お話が始まります。
 3兄弟にはそれぞれ希望がありました。あんちゃんは甘いあんこになること、ずんちゃんはずっしり重たいだいずになること、そしてきんちゃんは気楽に気ままに暮らすことです。でも、あんこになるには100万粒の仲間がいるといわれてあんちゃんはしょんぼり。ずんちゃんも、あずきとだいずは違うといわれてがっくり落ち込みます。「ねえさんも にいさんも きにしない きにしない」ときんちゃんが慰めていたそのとき、からすが飛んできて3粒を飲み込んでしまいます。3兄弟はどうなってしまうのでしょう。
 あずきの3兄弟はおもちゃのお手玉の中に入っていました。お手製のお手玉には、あずきが使われることが多かったのです。作者のとみながまいさんも、あずきの粒との出会いは、あんこではなくお手玉だったと「作者のことば」に書いています。そして、お手玉の中に閉じ込められているあずきたちをせつなく愛しく思ったそうです。
 この絵本は、あずきをせつなく思う作者の心から生まれました。作者はあずきたちに、あずきとして生まれてきた喜びを味わってほしいと願っています。そこには、子どもたちに向けるやさしい眼差しも感じます。(店主)

あずきの あんちゃん ずんちゃん きんちゃん(こどものとも2018年3月号)
とみながまい 文
植垣歩子 絵

福音館書店
2018年3月1日発行
本体389円+税

2018年2月4日日曜日

【本の紹介】パンタロンとケーキやさん



 プードル犬のパンタロンが主人公の絵本です。パンタロンはケーキが大好きです。ケーキを買うならベーカーさんのお店と決めているようです。ピカピカの真っ赤な自転車に乗って、ベーカーさんのお店に向かいます。
 お店が大忙しのベーカーさんは「おてつだい ぼしゅう!」の看板を出しました。それを見たパンタロンは、うれしくなてベーカーさんのお店に飛び込みます。でも、ベーカーさんは「おまえさんは、ケーキをつくるどころか たべてしまいそうだ!」といって雇ってくれません。
 その日、ベーカーさんはパンタロンの自転車にぶつかって怪我をしてしまいました。パンタロンはベーカーさんの代わりに働き始めますが、ベーカーさんはそのことを知りません。ベーカーさんは怪我が治り、お店を再開します。そして、自分がいない間、パンタロンが一生懸命働いていたことをお客さんから教えてもらいます。でも、パンタロンは自分のせいでベーカーさんが怪我をしてしまったと思い、ベーカーさんに顔向けできません。ベーカーさんは、お店に来なくなったパンタロンを探し始めます。パンタロンは、もう一度ベーカーさんのお店で働くことができるのでしょうか。
 1ページを1つの絵と短い文章でシンプルに構成しています。お話はリズミカルにテンポよく進みます。オリジナルは1951年の発刊です。レトロな雰囲気ですが、古臭さを感じさせません。最後に出てくる魅力的なケーキで、胸がいっぱいになりそうです。(店主)

パンタロンとケーキやさん
キャサリン・ジャクソン さく
レナード・ワイスガード え
こみやゆう やく

好学社
本体1450円+税
2016年11月1日発行

2018年2月3日土曜日

【本の紹介】かこちゃんはひとりっこ



 一人っ子の家庭は確実に増えているようです。国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、子ども1人の割合は1992年の9.3%から2010年には15.9%に増加しているそうです。
 この絵本に登場するかばのかこちゃんも一人っ子です。かこちゃんは兄弟や姉妹がいる友だちを羨ましく思っています。いつも一緒に遊べる子どもが家にいるからです。とくにさびしく思うのは、おやつのときです。「じゃんけんで おおきいのを とりっこして みたかったなあ」とおかあさんに話します。
 でも、かこちゃんにはたくさんの友だちがいます。お誕生日には大勢の友だちがお祝いに来てくれました。「いいなあ! かこちゃんて おともだちが いーっぱい!!」といわれて、かこちゃんはとてもうれしそうです。大きなケーキをみんなで切り分けて食べるとき、かこちゃんは元気な声でいいました。「じゃんけんで おおきいの とりっこねー!!」
 実は、私も一人っ子の親です。少し切ない気持ちにもなりましたが、最後は笑顔でこの絵本を読み終えることができました。一人っ子にも、それ以外の子どもにも読んでもらいたい絵本です。(店主)

かこちゃんはひとりっこ
石津ちひろ さく
高畠那生 え

好学社
本体1400円+税
2016年11月29日発行

2018年2月2日金曜日

【本の紹介】あめがふるふる



 それはきっと雨の日の魔法の言葉だったのでしょう。「あめがふるふる…」と唱えれば、不思議なことが起こります。雨の日も楽しく過ごせます。
 ネノくんとキフちゃんの兄妹は、お出かけするおかあさんからがお留守番を頼まれます。雨が降っています。「おそとへでないで、おへやであそぶのよ」といわれ、二人は「はーい!」と約束します。
 部屋で大人しく過ごしていましたが、窓の外をみると、垣根の向こうに緑の傘が見えます。フキの葉っぱの傘を差したカエルでした。いつの間にか、遠くの林の木たちや、草むらの草や、畑の野菜たちがうれしそうに踊っています。ネノくんやキフちゃんも踊り出しました。窓の外は、雨がいっぱい、水がいっぱい、そして魚がいっぱい。外では遊ばない約束でしたが、気がつけば二人は魚と一緒に部屋の外にいました。
 二人の兄妹のエネルギーが満ちあふれた絵本です。力強く描かれた絵がそのエネルギーをしっかり受け止めているように思います。(店主)

あめがふるふる
田島征三

フレーベル館
本体1400円+税
2017年5月発行

2018年2月1日木曜日

【本の紹介】ぼくのもものき



 くだものの木を育てることにあこがれていました。庭に植えた柿の木はすぐに枯れてしまいましたが、金柑が毎年実り、シロップ煮をつくって楽しんでいます。
 くだものは、庭がなくてもベランダの鉢植えで育てることができます。いろいろな種類のくだものが鉢植えで育てられます。この絵本に登場する男の子も、ベランダで桃を育てることにチャレンジしました。
 桜が咲き始めたころ、おかあさんと花の苗を買いに行った男の子は桃の木を見つけます。大好きな桃が育てられると知って男の子は大興奮。おかあさんを説得して、赤茶色のつぼみがたくさん付いた桃の木を買ってもらいました。
 男の子はおかあさんと一緒に、桃の木を大切に育てます。くだものを育てることは、そう簡単にはいきません。でも、ちょっとだけですが、自分で育てた桃を味わうことができました。桃の木と一緒に、男の子も成長したようです。(店主)

ぼくのもものき
文・絵 広野多珂子

福音館書店
本体1200円+税
2017年3月5日発行

【ご案内】子どもの本のろうどく会 vol.11

   くわのみ書房は「子どもの本のろうどく会 vol.11」を開催します。くわのみ書房のスタッフが「子どもに語る グリムの昔話」シリーズ(こぐま社)の中から選んだお話を声に出して読みます。子どもだけでなく、大人もきっと楽しめます。どなたもお気軽にご参加ください。 ■日 時:202...