とても読み応えのある写真絵本です。和ろうそく作りからつながる、何も捨てることがない物作りをたどります。
和ろうそくは職人が一本一本手作りしています。和ろうそくの蝋(ろう)は、ハゼの木の実をしぼって作ります。
蝋をしぼった後、大量のしぼりカスができます。その蝋カスは藍染職人の仕事で使われます。藍染の染液が入る甕(かめ)を温めて、染液の発酵を助けます。藍染職人は染液を新しく作るとき、木の灰を大量に使います。使用後に残ったたくさんの灰は別の職人の手に渡ります。陶器を作るときの釉薬に混ぜるのです。
このように日本で昔から続く物作りの過程では捨てるものがありません。この絵本の作者は「土に還る大きな循環がある」と指摘します。伝統的な物作りのよさを知ることは、今を生きる私たちにとっても大切なことだと思います。(店主)
和ろうそくは、つなぐ
大西暢夫
アリス館
2022年2月28日発行
定価(本体1,500円+税)