青い海をさっそうと進む船の写真が表紙を飾ります。小さな船です。乗っている人は二人。風で帆が膨らんでいます。
アフリカ大陸の東のインド洋に浮かぶマダガスカル島が舞台の写真絵本です。ヴェズと呼ばれる人々の暮らしを丁寧に描きます。表紙の船はヴェズの人々の生活に欠かせないカヌーでした。カヌーにモーターなどが付いていることはほとんどなく、風と人の力だけで走らせます。ヴェズとはマダガスカル語で「漕げ」という意味の言葉だそうです。カヌーを自由に操ることがヴェズの証しになっています。
ヴェズの人々は海で漁をして暮らしています。美しい海です。カヌーで漁をすれば生きていける豊かな海がある。だから、ヴェズの人々はお金やモノのためにあくせく働かず、ゆっくり暮らしていけるのかもしれません。
それでも、カヌーに船外機が付いたり、自分の家の屋根にソーラーパネルを付ける人が出てきたり携帯電話を持つ人が増えたり、ヴェズの生活も少しずつ変わってきているようです。この絵本の作者はヴェズの人たちを初めて見たとき、「こんなにのびのびと生きている人たちが、ほかにいるだろうか」と思ったそうです。私も作者と同じように、ヴェズの人たちからの問いかけをしっかり受け止めたいと思います。(店主)
青い海をかけるカヌー(たくさんのふしぎ2019年3月号)
堀内孝 文・写真
牧野伊三夫 絵
福音館書店
2019年3月1日発行
本体667円+税
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