正体不明の黒い生き物に導かれ、子どもが別世界で楽しいひとときを過ごします。私たちのすぐそばに、ときの流れが止まった世界があることを、あらためて教えてくれる絵本です。
子どもがいつも一人で帰る道に、その「くろいの」がいました。子どもは、ただ黙って行きすぎます。次に見かけた場所はバス停でした。次は花屋の店先の棚の上。子どもは思い切って声をかけます。すると、「くろいの」はトコトコ歩き始めました。子どもはついていきます。
塀の穴をくぐると、花と草のいい匂いがする庭があり、その先に家がありました。お茶で一服したあと、「くろいの」は子どもを押し入れに誘います。もちろん、押し入れは別世界の入り口。そこから屋根裏に上ると、時間が止まったような空間が広がっていました。
子どもはひとしきり遊び、昼寝もした後、「くろいの」と手をつないでもとの世界に戻ります。子どもはいとも簡単に別世界と行き来できるようです。家までの帰り道、子どもは父親と一緒になります。「くろいの」からもらった花を見せながら、子どもは父親に何を語っているのでしょう。(店主)
くろいの
田中清代 さく
偕成社
本体1400円+税
2018年10月発行
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