今年6月発刊の「よるのおと」(たむらしげる、偕成社)は独自の色使いが絵本好きの間で大きな話題になった絵本です。使われている色は決して多くないようですが、とくに澄み切った深みのある青で描いた夜の色が印象的です。この絵本を出版した偕成社の編集担当の方から、その制作過程についてお話を聞かせていただく機会がありました。千葉市の絵本屋さんの会留府が企画し、絵本好きや図書館に勤める人たちが9月4日に偕成社を訪ねました。
作者のたむらさんと編集担当者は7年ほど前、新しい絵本をつくろうを話し合いを始めました。そのとき、読み聞かせの会などで最後に面白い結末を迎える内容の絵本が好まれるようになっているけれど、あえてそれを避けるような絵本をつくろうということになったそうです。お手本になったのが「よあけ」(ユリー・シュルヴィッツ作・画、瀬田貞二訳、福音館書店)でした。「よあけ」は漢詩をモチーフにしていることで知られていますが、「よるのおと」は松尾芭蕉の「古池や」で始まる俳句がアイデアの元になっています。俳句をそのまま絵本で使うことも考えたそうですが、単に俳句を解説するような内容になってしまうと考え、そこから「思いっ切り離れて」構想を練ったそうです。
独自の色使いは「かきわけ版」という印刷の手法を採用したことで実現しました。かきわけ版の特長は、濁りのない色でシンプルに仕上げられることです。通常のカラー印刷と同じように4色を使っていますが、インクの色が異なります。通常はマゼンタ(赤紫)、シアン(青)、イエロー(黄)、スミ(黒)の4色を使い、それぞれの色の版がつくられ、4色の掛け合わせでさまざまな色が表現できるようになります。一方、この絵本は、特色と呼ばれるインクから選んだ青、紫、黄、そしてスミが使われています。特色には、一口で青といっても多くの青があります。この絵本で使う特色を選んだのは作者です。そして、4色それぞれの版も作者がつくりました。この絵本の色は、作者のイメージにもっとも近い色がシンプルに使われているのです。編集担当の方も触れていましたが、その色使いのいさぎよさは、俳句という文学のいさぎよさと通じるところがあるようです。
実は「よあけ」も、かきわけ版で印刷されているそうです。「よるのおと」は作業のやり直しも比較的容易にできるパソコンを使って版をつくりましたが、作者に大きな負担を強いるものだったようです。「よあけ」がまだパソコンなどなかった時代につくられたことに驚くばかりです。最後にもうひとつ。「よるのおと」は4色で印刷されていると書きましたが、さらに1色加えて銀が使われているページがあります。どのページでしょうか。ご興味がある方は、ぜひ探してみてください。
実は「よあけ」も、かきわけ版で印刷されているそうです。「よるのおと」は作業のやり直しも比較的容易にできるパソコンを使って版をつくりましたが、作者に大きな負担を強いるものだったようです。「よあけ」がまだパソコンなどなかった時代につくられたことに驚くばかりです。最後にもうひとつ。「よるのおと」は4色で印刷されていると書きましたが、さらに1色加えて銀が使われているページがあります。どのページでしょうか。ご興味がある方は、ぜひ探してみてください。
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