毎日帰りの遅いおとうさんが珍しく早く帰ってきた日、「うみのうえをあるこうか」と男の子を誘います。年に一度、海にかかる大きな橋をたくさんの人たち渡るイベントがあるので参加しようというのです。
橋を渡る日曜日は、いいお天気になりました。空にカモメが飛んでいます。橋の下を見て、男の子は「ひゃあ」と声を出します。海に吸い込まれそうになったからです。橋の反対側には逆方向に歩く人たちがいます。「おーい」と手を振ると、同じように手を振ってくれました。大勢の知らない人同士が手を振り合っています。橋を渡る人たちが一つにつながり、大きな喜びが満ち溢れている場面です。男の子は疲れも吹っ飛び、また元気になります。
男の子が渡った橋は、瀬戸内海のしまなみ海道にあります。しまなみ海道は広島県の尾道から愛媛県の今治まで、島伝いに続く全長約80kmの道です。絵本の作者二人もこのイベントに参加し、実際に橋を渡ったそうです。かなりの距離を歩き、疲労困憊になったお二人の姿も絵本のどこかに描かれているそうです。
男の子もがんばって橋を歩きました。橋の向こう側に着けば、そこは知らないまちです。男の子は、また橋を渡りたいとおとうさんに言います。もう一つ橋を渡れば、また知らないまちがあります。男の子の世界がだんだん広がります。
はしをわたってしらないまちへ(こどものとも2017年10月号)
高科正信 文
中川洋典 絵
福音館書店
2017年10月1日発行
本体389円+税
本体389円+税
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