沖縄に伝わる昔話の絵本です。背中に天女を乗せた黄金色の竜が、海賊に襲われた島を救います。
沖縄島の那覇で若い男女が夫婦になりたいと願っていました。でも、男は侍、女は百姓の生まれで、身分が異なり願いは叶いません。ある月夜の晩、二人は天女のお告げに従って舟に乗り、近くの慶良間(けらま)諸島の慶留間(げるま)島にたどり着きます。やがて二人にかわいい娘が授かり、可愛(かなー)と名付けられました。
可愛が7歳になる誕生日、不思議なことが起こります。可愛は、慶留間島のとなりの阿嘉(あか)島から現れた黄金竜とともに姿を消してしまいます。やがて何年かが過ぎ、海賊が慶良間島や阿嘉島を襲います。島を救ったのは、竜巻とともに現れた黄金竜でした。島の人々は黄金竜の背中に天女を見たといい、その天女はきっと可愛に違いないと思って手を合わせます。
絵を描いた赤羽末吉は「絵本よもやま話」(偕成社)でこの作品に触れながら、沖縄の色の美しさに強く感動したことを紹介しています。それにもかかわらず、この絵本の色使いはむしろ抑制されているように感じられます。登場する竜も線画で描かれ、黄金色といわれながら彩色はなく、とても控えめな存在です。でも、だからこそ、お話の美しい語り口が生きてくるように思います。一方、この絵本の最初の見開きページで、島々が黄色の海に囲まれていることに目を見張りました。南の太陽に光輝く海が、そこに描かれています。本書は1974年に銀河社から発刊された作品を復刊しました。(店主)
黄金りゅうと天女
代田昇 文
赤羽末吉 絵
BL出版
本体1400円+税
2018年3月20日発行
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