表紙の雪だるまには輪郭線がありません。でも、私たちにはその形がはっきりと見えています。見えない線が見えてくるこの現象を「主観的輪郭」というそうです。
この絵本は主観的輪郭を効果的に使っています。雪景色の白い世界で白い犬の「しろ」は景色に溶け込み、自由に世界を飛び回ります。私たちはその姿をはっきりと見ることができます。
作者の中村至男さんは子どものころ、しろと同じような体験をしたことがあるそうです。真冬の多摩川沿いを自転車で走り抜けたとき、大きな景色の中で命が満たされていくような気持ちになったそうです。景色に溶け込み、世界と一体になった不思議な感覚は、大人になった今も中村さんの心に残っています。
世界と一体化したしろは気分爽快。目がキラキラ輝いているようです。しろを通じて、私たちもその不思議な感覚を体験することができます。(店主)
ゆきだ ゆきだ(こどものとも年中向き2021年1月号)
中村至男 さく
福音館書店
2021年1月1日発行
本体400円+税
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