イスラエルに暮らす一人の女性を紹介する絵本です。イスラエルについて、私たちが知らないことはまだまだたくさんありそうです。
この女性は、まわりから「ウンム・アーザル」と呼ばれています。「アーザルのお母さん」という意味です。アラブ人の女性は、男の子を産むと尊敬を込めてそう呼ばれることがあるそうです。この絵本に登場するウンム・アーザルは、イスラエルに暮らすアラブ人です。
ユダヤ人の国といわれているイスラエルですが、実は人口の21%をアラブ人が占めています。アラブ人の多くはイスラーム教を信仰していますが、イスラエルのアラブ人には9%以下とわずかながらカトリックのキリスト教徒がいるそうです。ウンム・アーザルも、そんなキリスト教徒の一人です。ウンム・アーザルたちが暮らすイスラエル第三の都市・ハイファは、自由な考え方の人が多く、アラブ人とユダヤ人が仲良く平和に暮らせる唯一の街だそうです。
イスラエルを含む中東の地域は紛争が絶えず、今もガザ地区における争いを止めることができません。ただ、紛争以外の話題がなかなか伝わってこない中東にも、私たちと同じような普通の人々の暮らしがあるのです。ウンム・アーザルはキッチンで、大勢の人を喜ばせる美味しい食べ物を作ってきました。彼女の物語を知ることは、私たちの意識が争いのない世界に向かっていくことにつながると思います。(店主)
ウンム・アーザルのキッチン(たくさんのふしぎ2024年6月号)
菅瀬晶子 文
平澤朋子 絵
福音館書店
2024年6月1日発行
定価810円(本体736円+税)
0 件のコメント:
コメントを投稿