私たちの世界は「デタラメ」なことで満ちています。デタラメといっても、「いいかげん」とか「無責任」「すじのとおらない」といったことではありません。ここでは「じっさいにおきてみるまでまったく予測がつかないこと」を指しています。
例えばサイコロを振ったとき、私たちはどの目が出るのか分かりません。目はデタラメに出てくるから、予測がつかないのです。予測がつかないことに、私たちは「確率」という考え方を発明して立ち向かっていきました。
この絵本では、デタラメと確率について学びます。大人でも少しむずかしそうです。作者は、人はデタラメとの付き合いが下手だといっています。確かに、確率を無視した上、いろいろな思い込みから奇妙なことをしているのかもしれません。例えば、占いがそうです。デタラメであることに意味を見出し、先が読めないことの不安を解消して未来を予測しようとします。
一方で作者は、確率について理解を深め、コンピュータサイエンスが発達して計算が速くできるようになると、例えば天気予報のように、未来を予測する技術も飛躍的に進歩するといっています。私たちのまわりにあるデタラメは、徐々に減ってきているのかもしれません。それでも人は、単なる偶然や意味のない事柄に意味を付けて一喜一憂しています。作者がいうように、人の心理のおもしろいところです。作者はまた、「毎日を新鮮な気持ちで生きるためにはそれも悪くないとのかもしれない」といっています。(店主)
デタラメ研究所(たくさんのふしぎ2018年8月号)
小波秀雄 文
コマツシンヤ 絵
福音館書店
2018年8月1日発行
本体667円+税
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