私たちの世界では、ときどき思いもよらないことが起こります。この絵本のお話もその一つ。100年ほど前、カナダで実際にあったお話です。
アントニオが住むカナダのゴーガンダは森の中の小さな町です。アントニオのおかあさんは湖のほとりでホテルをやっていました。森にはたくさんの動物たちが住んでいましたが、アントニオにその姿を見せることはありません。森のおくに隠れて暮らしているのです。
ある年の夏、日照りが続き、乾ききった森で山火事が起こりました。火はまたたくまに燃え広がり、もはや逃げる場所は湖しかありません。人々が水に浸かりながら火事を見ていると、炎と煙の向こうから動物たちも湖に逃げてきました。キツネやウサギ、オオカミのほか、クマまでやってきました。人間と動物たちは火が消えるまで、体が触れるほど近くに立っていました。
アントニオが5歳のときのお話です。アントニオはその後もずっと、山火事の日のことを忘れることはありませんでした。あのとき、人間と動物を隔てていたものが確かに無くなっていたのです。アントニオは作者の祖父です。祖父は自分の子どもたちにこの話を聞かせ、子どもは母となり作者に語り伝えました。力強く描かれた絵がお話の内容をしっかり支えています。(店主)
森のおくから
レベッカ・ボンド 作
もりうちすみこ 訳
ゴブリン書房
本体1400円+税
2017年9月発行
2017年9月発行
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