イギリスの首都、ロンドン。華やかな街の陰に凄まじいお話が隠されていました。文明社会で生きるということはどういうことなのか。それを考えるきっかけになる絵本です。
1858年の夏、ロンドンの中心部を流れるテムズ川はとてもくさかったといいます。熱波が襲い、すごい陽射しが川に浮かぶ腐りかけたゴミを照りつけました。頭痛や吐き気を催すほどの悪臭にビクトリア女王も体調が悪くなったほど。「悪夢の悪臭」と呼ばれたそうです。
そのころ、テムズ川には人々の排泄物、つまりおしっこやうんち、さらに動物の死骸や馬の糞など、くさい匂いの原因となるものが捨てられるようになっていました。便利に暮らせる街に人々が増えると、いろいろな問題が起こります。テムズ川の汚れた水のせいで、ロンドンでは恐ろしい病気のコレラが度々流行し、多くの人々が亡くなりました。そんなロンドンの街を救ったのが、この絵本の主人公、ジョゼフ・バゼルジェットです。
土木技師のジョゼフは下水道計画を考え、やがて下水道工事が進められました。ジョゼフはロンドンの人々をコレラと悪臭から救ったのです。世界にはまだまだ、おしっこやうんちの混じった下水で病気になる人々が大勢います。でも私たちは問題解決のため、街のえらい人たちが何とかしてくれるのを待っている必要はありません。この絵本には、私たちができることのヒントも書いてあります。(店主)
なんてくさいんだ! ロンドンを救ったジョセフの物語
コリーン・ペフ 文
ナンシー・カーペンター 絵
金原瑞人 訳
あかつき教育図書
2023年3月30日発行
定価1,980円(本体1,800円)
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