日本の児童書の先駆者として活躍した石井桃子の展覧会に行きました。編集者、翻訳家、作家など多彩な側面を持った石井の生涯を貴重な資料とともに紹介しています。8月28日に開催地の横浜まで出かけました。
石井は1928年に日本女子大学校英文学部を卒業しました。ここで学んだ英語が、石井のその後の人生を支えて行くことになります。原書を通じた「クマのプーさん」との出会いがあり、その出会いから7年後の1940年に、石井にとっての初めての単行本となる翻訳の「熊のプーさん」が岩波書店から発刊されました。
石井には小里文子という親友がいました。日本女子大の先輩でもあり、石井が卒業後に働き始めた文藝春秋社の同僚でもありました。小里は結核のため、1938年に33歳の若さで亡くなっています。病床の小里は、石井が翻訳するプーの話をとても楽しみにしていたそうです。石井は「熊のプーさん」のあとがきに「とりわけ、私がプーに感謝したのは死を前にしたある友だちを、プーが限りなく慰めてくれた時でした」と書いています。
石井にとって小里の存在はとても大きかったようです。石井は読売文学賞を受賞した自伝的小説の「幻の朱い実」で、小里との交流を描いています。この作品が発刊されたのは1994年。石井が87歳のときでした。
自立した人間であることを生涯に渡って貫き通した石井の人生に圧倒されました。「石井桃子展」は9月24日(月)まで、神奈川県横浜市の県立神奈川近代文学館で開催されています。(店主)
「没後10年 石井桃子展ー本を読むよろこびー」
2018年7月21日(土)~9月24日(月・降休)
9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
月曜日は休館日(9月24日は開館)
県立神奈川近代文学館
(横浜市中区山手町110、電話045-622-666)
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