寓話のような数学のお話です。数学者の「ぼく」がアリになったところからお話が始まります。数学者のアリは、数学者が研究している「数」や「図形」が実際には存在していないことを教えてくれます。数や図形は頭の中だけで考えられているイメージに過ぎないのです。
数学者のアリは、普通のアリが数を理解していないことに気づきました。仲間のアリは、美味しそうな実がたくさんあっても、いくつあるのかまったく気にかけません。そこにある実を巣に運び込もうとするだけです。
でも、翅を持ったあでやかな姿のアリは数がわかるようです。数学者のアリは驚きました。しかも人間の数とは違い、色や輝きや動きがある生きた数だといいます。人間が知っている数とは、全く違う種類の数でした。アリには人間の数がわからない。でも、人間もアリの数がわからないのです。
数学者のアリは、小さなアリになって初めて、大きな数学の宇宙の入り口にたどり着いたことを自覚します。不思議な寓話に導かれ、私たちも数学の宇宙の大きさに気づきます。文章を書いた森田真生さんは在野の数学研究者、絵を描いた脇坂克二さんはテキスタイルデザイナー。ちょっとむずかしいお話ですが、見開きのページに描かれた絵が目を楽しませてくれるでしょう。
アリになった数学者(たくさんのふしぎ2017年9月号)
森田真生・文
脇坂克二・絵
福音館書店
2017年9月1日発行
本体667円+税
本体667円+税
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