中国の昔話の絵本です。登場する人物や動物たちを影絵のように黒色で描いていますが、その下にはさまざまな色彩が隠されているようです。色彩の対比も存分に味わいましょう。
砂漠の中に王宮がありました。そこに住む王妃は自分を美しくする薬草を取ってくるよう薬草とりに命じます。薬草とりは砂漠を越え、森に行き、光り輝く美しい九色の鹿と出会います。
薬草とりは川に落ちたところを九色の鹿に救われます。お礼をいう薬草とりに、鹿は自分のことは決して誰にもいわないようにいいつけます。でも、王宮に帰った薬草とりは、九色の鹿のことを王妃に話してしまいます。国王から褒美を与えるといわれ、薬草とりは九色の鹿をとらえるため、国王を連れて再び森に行くことになります。
敦煌の壁画に描かれた物語が絵本になりました。一羽の鳥がお話の語り手を勤め、たんたんとした語り口ながら「欲は 人を 恩知らずに してしまうもの」といったドキッとさせられる表現も織り込みます。作者は物語を冷静に見つめ、洗練された形に仕上げました。(店主)
九色のしか
リン・シュウスイ:文
リャオ・ジャンホン:絵
宝迫典子:訳
廣済堂あかつき
2020年5月30日発行
本体1600円+税
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