海に浮いて波に流れている海藻を「流れ藻(ながれも)」というそうです。ながれもは、ただ波間に漂うだけの存在ではありません。そこで繰り広げられる生命の営みを、この絵本を通じて知ることができます。
浅い海の底の岩に海藻が生えています。夏の初め、強い風が吹き、大きな波ができて海藻をちぎってしまいます。浮袋が付いている海藻は沈むことなく、海に流されていきます。これが、ながれもです。
小さな魚たちが、ながれもと一緒にいるようになります。ながれもは、魚たちを守るお家のような存在でしょうか。一方で、ながれものまわりには、その小さな魚を一口で食べてしまう大きな魚もやって来ます。大きな海に比べれば、ながれもが営む世界は小さなものかもしれません。でも、そこはとてもダイナミックな世界のように思えます。
やがて、ながれもは葉や浮袋を失い、茎だけのようになって砂浜に打ち上げられます。私たちが見つけるのは旅を終えたながれもだけ。この絵本は、私たちが見ることのない「ながれものたび」を想像するきっかけになるでしょう。(店主)
ながれものたび(かがくのとも2024年7月号)
浅井ミノル ぶん
成広のり子 え
福音館書店
2024年7月1日発行
定価460円(本体418円+税)
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