かつて日本はアメリカやそのほか多く国と戦争をしました。普通の人々が暮らす街にも爆弾が落とされるようになり、大勢の人たちが家や家族を失いました。この絵本は、そんな時代のある家族のお話です。
戦争が激しくなると、街に暮らす子どもたちは疎開を強いられるようになりました。疎開とは、爆弾が落ちてこない田舎に親や家族と離れて暮らすことです。家族の中で一番小さい子どもの妹まで疎開することになりました。おかあさんは名札を縫い付けた肌着をたくさん用意しました。
おとうさんが用意したのは数え切れないほどのはがきでした。そのすべてに自分の住所と名前を書き、元気な日は、はがきに丸をかいて毎日一枚ずつポストに入れるよう妹にいいつけます。こうすれば、字が書けない妹も元気でいることを伝えることができます。最初に届いたはがきには、大きな赤鉛筆の丸が書かれていました。でも、次の日から急に丸は小さくなり、やがてバツになり、とうとうはがきは来なくなりました。
作家の向田邦子のエッセイからつくられた絵本です。戦争が暗い影落とす中、父親が見せる家族への愛が強く心を打ちます。素朴な絵がお話にマッチし、子どもの心が表現できているように思います。(店主)
字のないはがき
向田邦子=原作
角田光代=文
西加奈子=絵
小学館
2019年5月27日発行
本体1500円+税
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