最初は「デナリ」という名前にピンときませんでした。以前は「マッキンリー」と呼ばれていたとの記述から、冒険家の故植村直巳が最後に挑んだ山であることを知りました。
デナリは北アメリカ大陸の最高峰で、北極にも近く、頂上付近は夏でもマイナス20度になるそうです。いうまでもなく、気候条件はたいへん厳しい。それでも、この山は世界中の人々を惹きつけ、多くの登山家が挑みました。そして、そのうち何人もの人が帰らなかったといいます。
この写真絵本はデナリ登山の記録です。作者の石川直樹さんにとって2回目のデナリは一人で行く単独行でした。石川さんはなぜ、たった一人で2回目に挑んだのでしょうか。頂上に近づくにつれ、石川さんには相反する感情が湧いてきたようです。最後の斜面で「寒いし、ちょっとこわい。でもうれしい」。頂上では「こわいけど、気持ちいい。不安だけど、うれしい。苦しいけど、おだやか。さみしいけど、楽しい」。石川さんの素直な気持ちがつづられています。
吹雪の風景に息を呑まされます。何も見えないのです。「左右がわからなくなるだけじゃなくて、上下もわからなくなって、しろい宇宙に放り出されたように感じる」と石川さんは描きます。吹雪が止んで後ろを振り返ると、そこには自分の足跡だけがありました。大きな自然の中で、ちっぽけだけど、確実に自分がいたことの証を見出したのでしょう。(店主)
アラスカで一番高い山 デナリに登る(たくさんのふしぎ2020年4月号)
石川直樹 文・写真
福音館書店
2020年4月1日発行
本体700円+税
0 件のコメント:
コメントを投稿