日本・中国・韓国の3カ国で、それぞれの言語で刊行が予定されている「日・中・韓 平和絵本」シリーズの10冊目の絵本です。岡山県の小さな町に引っ越してきた女の子と朝鮮人のおばあさんとの交流を描きます。
女の子の名前は由美ちゃんです。由美ちゃんの通学路からは、朝日に輝く瀬戸内海がきれいに見えます。道の途中に「そまつなもの」といってよい家があり、人が住んでいるらしく白い洗濯物が干してありました。おしめのようです。由美ちゃんは「赤ちゃんが、いるのかな?」と思いました。
由美ちゃんは学校からの帰り道、歌いながら洗濯物を取り込むおばあさんを見かけます。おばあさんの声はよく響き、歌は心に残ります。由美ちゃんとおばあさんは仲良しになりました。由美ちゃんはおばあさんに「赤ちゃんがいるの?」と尋ね、「見せて!」とお願いしますが、おばあさんは「今度」といって会わせてくれません。
その3日後、おばあさんの家の方から救急車が降りてきます。おばあさんは翌日、由美ちゃんに赤ちゃんが入院したことを告げます。赤ちゃんの名前は春姫。もうすぐ43歳になるといいます。おばあさんは第2次世界大戦の戦争中、朝鮮から日本に来て、広島で原爆に被曝します。そのときお腹の中にいた春姫は大きくならず、いつまでも赤ちゃんのようにおしめをしていたのです。
由美ちゃんは友だちと一緒に、おばあさんから聴いた歌を笛で吹いておばあさんたちを慰めようとします。その歌はおばあさんの故郷の歌でした。
作者のピョン・キジャさんは岡山県生まれの在日朝鮮人二世です。胸を締め付けられるようなお話ですが、由美ちゃんの行為に慰められるのはおばあさんだけではありません。チョン・スンガクさんの絵も作者の深い思いを感じさせ、見事です。(店主)
春姫という名前の赤ちゃん
ピョン・キジャ 文
チョン・スンガク 絵
童心社
本体2500円+税
2017年3月1日発行
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