長崎県の五島列島にある島の生活を描く絵本です。作者を島に導いたのは、そこで伝統的に作られていた郷土菓子でした。その郷土菓子が「かんころもち」。作者の娘さんも大好物です。でも、かんころもちがもうすぐ食べられなくなるかもしれないと聞いてびっくり。かんころもちの原料が減っているというのです。
かんころもちの原料は、スライス状に切ったさつまいもをゆでて干したものです。「カンコロ」と呼ばれ、保存食として作られました。かんころもちは、カンコロともち、さらに砂糖と生姜を混ぜ合わせて作ります。
カンコロを作ってきたのは、江戸時代にキリスト教が禁止されても信仰を続けていた潜伏キリシタンの人たちでした。江戸時代後期、潜伏キリシタンの人たちは弾圧から逃れるため五島列島に移り住むようになりました。移住した多くの場所はお米が取れない土地。さつまいもはそうした土地でも作ることができたのです。
島には今も先祖からの信仰を守り続けている人たちがいます。教会もあります。ただ、多くの教会で信徒の数は減ってきており、いずれ閉鎖される教会が出てくることは避けられそうもありません。教会に通う人たちは、カンコロを作ってきた人たちでもあります。かんころもちを通じて知った島の暮らし。そこに住む人たちの思いとともに、これから先もつながっていくことを願わずにはいられません。(店主)
かんころもちと教会の島(たくさんのふしぎ2021年9月号)
にしむらかえ 文・絵
福音館書店
2021年9月1日発行
定価770円(本体700円+税10%)
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