この絵本の作者の村上慧さんは、背負って歩ける家をつくり、そこで暮らしています。この家はとても小さく、主に発泡スチロールで出来ています。発泡スチロールはとても軽く、加工もしやすく、その上、断熱効果も高いというメリットがあります。
村上さんは家を背負っていろいろなところに行きます。でも、眠るためには家を置く土地が必要になります。村上さんは、お寺や神社、お店などをたずね、家を置かせてもらえるよう土地の持ち主と交渉します。断られることもあるそうですが、どの町でも必ず協力してくれる人がいるそうです。
夜は家の中に厚さ1cmのマットを敷いて寝ます。マットは地面の上に敷くことになり、夏はコオロギと一緒に寝ることも多いそうです。遠くで鳴いているコオロギの声はとても風流で気持ちのよいものですが、耳のすぐ近くで鳴くとうるさくて眠れなくなるそうです。そんなとき、村上さんは耳栓を使います。それやこれやで、この家に暮らすことはなかなかたいへんそうです。
この絵本で村上さんの暮らしぶりが分かります。でも、どうして村上さんはそんなことをしようと思ったのでしょう。人間はこれまでいろいろな場所に住み、いろいろな暮らし方をつくって生きてきました。村上さんは、それを個人的に自ら体験しようしているように思います。そして、私たち人間が生きていくため本当に必要なものは何なのか探しているのかもしれません。(店主)
家をせおって歩く かんぜん版
村上慧 作
福音館書店
2019年3月10日発行
本体1400円+税
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