日本の北海道にはアイヌと呼ばれる先住民族がいます。この絵本は、一人のアイヌの人生をファンタジックな物語として描きます。
主人公の名前はユキエ。ユキエは小学校に上がる少し前の日から、おとうさんやおかあさんと離れ、フチ(「おばあさん」を意味するアイヌ語)の家で暮らし始めます。
フチはアイヌの人々が言い伝えてきた物語をアイヌ語でうたいます。ユキエが17歳のとき、東京から口ひげの生えた男の人がやってきて、フチの歌声を文字として書き留めたいので手伝ってほしいと頼みます。アイヌ語には文字がないのに、その言葉を文字にうつしとることなどできるのでしょうか。
ユキエのモデルになった知里幸恵(ちりゆきえ)は、アイヌ文化を今に伝える「アイヌ神謡集」を編纂しました。祖母が語るアイヌの物語を、アイヌ語の持つ音楽性を損なうことなく、見事な日本語に置き換えたと高く評価されています。口ひげの男のモデルは、著名な言語学者の金田一京助です。くまはアイヌ民族の精神的シンボルであり、この絵本のお話でも要所要所に登場します。
この絵本は、イタリアの児童文学作家とイタリア在住の日本人画家による作品です。イタリアと日本をアイヌ文化でつなぐものとして、イタリア本国でも注目を集めたそうです。(店主)
ユキエとくま
アリーチェ・ケッレル 文
はせがわまき 絵
関口英子 訳
工学図書(山烋のえほん)
2023年6月8日発行
定価(本体1,800円+税)
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