世界には300万隻もの沈没船が存在しているそうです。海に沈んだ沈没船を調べると、私たちの歴史をうかがい知ることができます。
例えば、長崎県・鷹島の海では元寇の沈没船が2隻も発見され、今も調査が続いています。元寇は日本の鎌倉時代の一大事件です。当時のモンゴル帝国の船団が2回、日本を攻め込みました。2回目のときは台風が日本を救ったといわれています。台風によって多くのモンゴルの船が海に沈みました。その沈没船がまだ残り、私たちにいろいろなことを教えてくれるのです。
海中などに残された遺跡を「水中遺跡」といいます。沈没船は水中遺跡の代表的な存在です。水中で砂に埋もれた沈没船は真空パックのように酸素から遮断された状態になります。そのため、木材などの保存状況はとてもよくなり、沈んだ当時に近い姿を私たちに見せてくれます。沈没船は、まさにタイムカプセルです。
水中遺跡を調べる学問を「水中考古学」といいます。実は、水中考古学の研究者自身が水中遺跡を発見することはほとんどないそうです。漁師やダイバーなど、日ごろから海に関わる人から得た情報を貴重な発見につなげています。だから水中考古学者は、できるだけの多くの人々に水中遺跡にの存在を知ってもらいたいと考えているそうです。この絵本もそうした願いから生まれました。(店主)
沈没船はタイムカプセル(たくさんのふしぎ2023年7月号)
佐々木ランディ 文
矢野恵司 絵
福音館書店
2023年7月1日発行
定価770円(本体700円+税10%)
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