昔ながらのやり方で繭から絹糸、そして真綿をつくる過程を描いた写真絵本です。命あるものからつくられる糸と綿。私たちが生きるということはどういうことなのか、あらためて考えてみるきっかけを与えてくれる絵本です。
かつて日本では多くの場所で蚕を育てていました。蚕から絹糸をつくっていたのです。蚕のことを、人々は感謝を込めてお蚕さんと呼んでいました。
蚕は蛹になるとき白い繊維を吐き出します。白い繊維が重なり、蚕の姿が見えなくなるほど厚くなり、ウズラの卵くらいの繭ができます。蚕は自らつくった繭の中で蛹になります。繭から繊維を解いて、糸をつくります。20個ほどの繭の繊維を撚り合せます。真綿も繭からつくられます。繭を薄く引き伸ばし、それらを重ねると真綿になります。
この絵本の舞台は滋賀県と岐阜県の県境です。私の父母の出身地である群馬県もかつてお蚕さんをたくさん育てていました。「くわのみ書房」という店の名前は、蚕の餌になった桑の木から由来しています。それでもお蚕さんのことは知らないことばかりでした。(店主)
大西暢夫
アリス館
2020年1月20日発行
1400円+税
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