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絵本・児童書の専門書店です。小さいカフェもあります。

絵本と楽しいひとときを過ごしましょう。素敵な絵本をご紹介します。大切な人とご一緒に、あるいはお一人でも。あなたにぴったりの絵本が見つかりますように!

2025年11月19日水曜日

【本の紹介】白さぎ

 



 少女の心のざわつきを繊細に綴る物語です。丁寧に描かれた挿絵が美しく調和し、物語の世界に奥行きを与えています。

 少女のシルヴィアは祖母と二人、農場で暮らしています。8歳まで工場の町で暮らし、1年前に初めて農場にやってきました。野山歩きを好み、今では森の中を歩き回ることが好きな雌牛と多くの時間を過ごすようになりました。

 シルヴィアは森の中で、銃を肩にした背の高い若い男と出会います。若者は、ある鳥を探していました。鳥を集め、剥製にしているのです。若者は近くで白さぎを見かけ、追ってきたと言います。その白い鳥を見たことがあるシルヴィアは…。

 物語の舞台は、アメリカ北東部のニューイングランドと呼ばれているところです。美しく描写された自然の中で少女の心が揺れ動きます。読み終えたときの余韻が心地よい作品です。(店主)


白さぎ

セアラ・オーン。ジュエット 作

バーバラ・クーニー 絵

石井桃子 訳


のら書店

2025年7月22日発行

定価:1800円(税別)


#くわのみ書房

【本の紹介】秋岡教授の音楽学を愉しむ24の扉




 そもそも「音楽学」という学問分野は、なかなか理解しづらいものと思われます。音楽に関する事柄すべてが研究対象になっているそうで、この本のあとがきでも「かなり裾野が広い学問分野」とされています。その広さゆえに、何をやっているのか、よく分からない。

 この本の著者、秋岡陽さんは音楽学を専門とする研究者です。この本でも音楽に関する幅広いトピックを取り上げ、タイトルに「音楽学を愉しむ」とありますが、そのトピックを誰よりもご本人が愉しまれています。

 書いている人がこれだけ愉しんでいると、読む人も愉しくなるのは当然の成り行きです。ほとんどクラシック音楽にまつわるトピックですが、堅苦しさのない記述に誰もが引き込まれていきます。インターネットを通じて豊富な資料が閲覧できるようにな理、さらに多くの演奏まで聴くことができるようになったことも紹介されています。すでに多くの人が音楽を多様に享受できる環境は整えられているのです。

 秋岡さんは長く大学教授として教鞭をとり、その講義の内容もこの本の中に散りばめられているようです。実は、秋岡さんはくわのみ書房店主の大学時代の先輩。今まで知らなかった秋岡さんの素顔を垣間見たようで、とても興味深く読ませていただきました。(店主)


秋岡教授の音楽学を愉しむ24の扉

秋岡陽


音楽之友社

2024年8月発行

2,420円 (本体2,200円+税)

2025年11月15日土曜日

【本の紹介】イタリアの丘の町(たくさんのふしぎ2025年12月号)

 



 イタリアへの愛が詰まった絵本です。読む人をイタリアの「丘の町」に誘います。

 イタリアは、1861年に統一国家としてのイタリア王国の成立が宣言されるまでいくつもの小さな国に分かれ、それぞれの国は山の上に城壁をめぐらせた自分たちの町をつくっていました。山岳都市とも呼ばれるこれらの丘の町は、今でもイタリア各地に残っています。

 この絵本の作者の古山浩一さんは、年に一度、イタリアなどの古い街並みが残るところ訪ね歩き、スケッチを描いているそうです。この絵本では、イタリアのスカンノ、ボマルツォ、マテーラ、ラグーサ、ピティリアーノといった、あまり馴染みのない地名の町を紹介します。精緻なスケッチに目を見張ります。ペン先の太さが異なる約30本の万年筆を駆使して描きました。

 町全体を俯瞰するアングルがある一方、家の玄関の扉や人々の暮らしぶりに着目したスケッチもあります。イタリアの風を濃密に感じさせる絵本です。(店主)


イタリアの丘の町(たくさんのふしぎ2025年12月号)

古川浩一 文・絵


福音館書店

2025年12月1日発行

定価810円(本体736円+税10%)


#くわのみ書房

2025年11月14日金曜日

【本の紹介】くんくん すぴすぴ(ちいさなかがくのとも2025年12月号)




 犬は匂いを嗅ぐことが大好き。「くんくん すぴすぴ」と、鼻を興味のあるものにくっつけようとします。

 この絵本に登場するトイプードルの「ニコ」も、いろいろなものに鼻先を向けています。原っぱで出会った大きい犬とは、お互いにお尻の匂いを嗅ぎ合っています。どうしてかな?

 これは犬同士の自己紹介のような行動だそうです。絵本のおりこみふろくの解説によると、犬はお尻の近くにある肛門腺というところから出てくる匂いで、その犬の年齢、性別、そして健康状態まで読み取るそうです。犬はお尻の匂いを通じてお互いを知り、お友だちになるようです。

 犬の鼻って、すごいですね。犬のことを知れば、もっと犬と仲良くなれそうです。(店主)


くんくん すぴすぴ(ちいさなかがくのとも2025年12月号)

片川優子 ぶん

鈴木智子 え


福音館書店

2025年12月1日発行

定価460円(本体418円+税10%)


#くわのみ書房

2025年11月12日水曜日

【本の紹介】せんにんのいし(こどものとも2025年12月号)




 不思議な世界を旅する絵本です。旅をする主人公のボノさんは、青い服を着て、青い帽子を被り、赤い鞄を肩に下げて、なかなかカッコいい。

 ボノさんの前に突然、山によく似た石が現れます。石は何回捨てても戻って来ます。石から聞こえてくる声に導かれ、気づくとボノさんは大きな岩山のふもとに立っていました。

 声の主は「フラフラせんにん」でした。「そのみちをのぼってきておくれ」と言われたボノさんの旅が始まります。いくつか困難もありましたが、せんにんの手助けもあって、ボノさんは山の上まで無事たどり着くことができました。ボノさんはせんにんと出会い、二人仲良くお風呂に入って楽しそうです。

 ボノさんが旅した世界は、どうやら山のような形をした石の表面に広がっていたようです。ボノさんはもとの家に戻ることができました。せんにんのいしは、まだそこにあります。フラフラせんにんもしばらく、ボノさんの家にいるようですよ。(店主)


せんにんのいし(こどものとも2025年12月号)

たむらしげる


福音館書店

2025年12月1日発行

定価460円(本体418円+税10%)


#くわのみ書房

2025年11月11日火曜日

【本の紹介】ゆきが まちどおしい ヤチネズミさん(こどものとも2025年12月号)




 愛らしい動物たちの姿に惹き付けられます。雪の季節を背景に、動物たちのあたたかい物語を綴った絵本です。

 畑の隅にヤチネズミさんが暮らしています。雪が降ることを楽しみに待っているようです。

 やがて雪でお家の窓も埋まってしまいました。ヤチネズミさんは外に出て、雪を掘って進みます。雪の中を行けば、キツネにもテンにも、タカにもフクロウにも見つからず、安全なのです。

 ヤチネズミさんが訪ねた先は、ヒメネズミさんのお家。プレゼントを交換し、楽しい夜を過ごしました。自然の中で生き生きと過ごす動物たちを魅力的に描きました。(店主)


ゆきが まちどおしい ヤチネズミさん(こどものとも2025年12月号)

あかしのぶこ さく


福音館書店

2025年12月1日発行

定価460円(本体418円+税10%)


#くわのみ書房

2025年11月7日金曜日

【本の紹介】どっちからくるのかな?(こどものとも0.1.2. 2025年12月号)




 いろいろな乗り物が登場する絵本です。乗り物だから、動いて登場します。

 見えないところから登場します。見えなくても、音が聞こえてきます。

 「ウー ウー ウー」とサイレンを鳴らして消防車が来たようです。右か左か、どっちから来るのかな?

 あっちこっちから乗り物がやってきます。小さな子どもたちは何回も読むうちに、どっちから来るか分かってしまうでしょう。でも、きっと何回も繰り返し、この絵本を楽しむと思います。(店主)


どっちからくるのかな?(こどものとも0.1.2. 2025年12月号)

山崎杉夫 さく


福音館書店

2025年12月1日発行

定価460円(本体418円+税10%)


#くわのみ書房

【本の紹介】白さぎ

   少女の心のざわつきを繊細に綴る物語です。丁寧に描かれた挿絵が美しく調和し、物語の世界に奥行きを与えています。  少女のシルヴィアは祖母と二人、農場で暮らしています。8歳まで工場の町で暮らし、1年前に初めて農場にやってきました。野山歩きを好み、今では森の中を歩き回ることが好き...